NaoMaru

由宇子の天秤のNaoMaruのレビュー・感想・評価

由宇子の天秤(2020年製作の映画)
-
春本雄二郎 監督作品

リアリズムを極めた作品。エンタメを削いでゆくとドキュメンタリーに近づき、俳優は市井の人間となり、物語性がいい意味で薄まる。主役はドキュメンタリーのディレクター、木下由宇子役を演じた瀧内公美。彼女は 「いじめ自殺事件」」を追いながら、父親とその教え子にまつわる「事件」にも巻き込まれる。事件が事件を誘発し、虚と実が入り混じり、真実は近づくと遠ざかり、闇の中へ消えてゆくのか…。

現実の人生は演出も音楽もなく、ときどき喜怒哀楽を味わう私たち。本作はこのテイストで作られており、そこに非日常の「事件」が起こりざわめいてゆく。言うまでもなく「事件」は被害者と加害者から成り、その背後には家族がいて当人同様の苦しみを背負う。全編にわたって各々の倫理観が問われている。正解はないのであろうが、暴力は裁かれなければならない。映画と現実の地平がなくなりそうな作品である。
ーー本作の評価は難しく、現時点では保留としました。
NaoMaru

NaoMaru