風来坊

アメリカの息子の風来坊のレビュー・感想・評価

アメリカの息子(2019年製作の映画)
3.0
元々はブロードウェイで人気を博した舞台劇らしい。登場人物の少なさと限定された空間での空間で行われる会話劇は舞台劇が元ネタなのがよく分かります。ただ…折角映画にしたのだから少し設定を弄って、舞台をワイドにしても良かったのではないかと思います。

白人の警官の刷り込まれた根底から来る人種差別から息子そっちのけで繰り広げられる夫婦の間の堂々巡りの確執…観ていてツラい。
価値観の全てが違うような2人がなぜ夫婦になったのかがちょっと理解出来ない。

窓の外のどしゃ降りの様子が不穏さを際だたせていて、さりげないですが小道具としてなかなかの存在感を出しています。
警察の対応がホントにクソ…これじゃ怒るのもムリはない…。更に黒人の捜査官が火に油を注ぐ…。黒人側から白人への差別や警官という権力を持った者からの一般人への差別も描いている模様。何の権利があって説教するのか腹立たしい。

母親役の女優さんは息子の為必死で差別剥き出しでやる気がなく話の通じない警官相手に憤りヒステリックになる迫真の演技で魅せますが、個人的には卑屈な感じがあまり良く見えないのがネック。
劇中に「街を巡回する警官は武器を使うロボットではない」という台詞があるが昨今のアメリカで起きてる警官の対応を見てしまうと空虚に思える。

登場人物達のイライラがこちらにも伝わり非常に胸糞悪い。ハッキリと状況を説明してないのにここまで胸糞悪いのは流石かも。
閉塞的な空間でのなかなかに出来た会話劇で好きな人には堪らないし、人種差別問題にも一石を投じている作品ですが、とにかくイライラして私には合わず充分には良さを受け止められませんでした。

まとめの一言
「果てしなく続く人種差別と悲しみの連鎖」
風来坊

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