メガネン

アントマン&ワスプ:クアントマニアのメガネンのレビュー・感想・評価

3.6
この映画はMCUのフェーズ5の開始作品です。
フェーズ4から6までの全ての作品は「マルチバース」を中心のテーマに扱うことが公表されていますから、フェーズ4はその下敷きとなる作品群だったと思います。
翻すと、今作はマルチバースを扱うというテーマに本格的にコミットした作品であり、言い換えると「アントマン」ではありませんでした。

これは仕方のないことだとは理解しています。
マルチバースをテーマにする以上、ドクター・ストレンジの魔法と並んでアントマンの量子世界は触れる必要のある領域です。
ジャネットの量子世界で過ごした長い時間についてはこれまで触れられていなかったので、そこを深掘りする意味でも、アントマンには宿題が残されていたと言えます。
その宿題を修めつつ、この"マルチバースサーガ"のメイン・ヴィランを紹介するという役割を担った、新シーズンを始めるにあたっての意欲作だった事は間違い無いと思います。

ただ、個人的にはアントマンとワスプの繰り広げる、拡大縮小自由自在のアクションと、主人公ラングと三人の仲間たちによるドタバタ劇が第一作アントマンにも、第二作アントマン&ワスプにも、よく表れていて、そこが好きなところでした。
等身大の父親像というのも魅力でしたし、ジョン・ウー捜査官との滑稽劇も見ものでした。

ですが、今作には三人組もウー捜査官も登場せず、ひたすらハイメガアクションと量子世界の不思議描写がメインで、視聴しながら疲れを感じました。

これは映像体験としては相変わらずすごい映画でしたが、「アントマン」ではなく「征服者カーン」だなと思って、途中で気持ちを切り替えて視聴しました。

ラングと娘のキャリーとのやり取りは親子としては理想的な感じもしたし、スタチュアとしていずれアベンジャーズに加わる布石を打ったようにも見えたのは嬉しいです。
でも、一つのヒーローを主題に関するのならば、やはりそのヒーローの良さをもう少し大事にした作劇はできなかったかと思うのです。もちろん、前述のような要素を押し出すことがイコールキャラクターを大事にすることだとは言えないのは承知です。今作でも、アントマンの活躍は極めて重要でしたし、結末でのワスプとの絆など見どころは決して少なくありません。
ハンク・ピム博士の活躍も軽妙でしたし、量子世界のクリーチャーたちも面白かった。

でも、どうしても、この映画、アントマンが居るスター・ウォーズにみえるんです。

あとはM.O.D.O.C.K.…キャラの使い捨てはやめて欲しいな。
またマルチバースだから別の宇宙のM.O.D.O.C.K.を出せるとかそういう話なら、退屈です。

ミッドクレジットシーンはともかくポストクレジットシーンが、ドラマを観ていない人には意味不明だというのも…うーん…。

MCUの世界が広がるのは良いのですが、このままではMCUは、どこから観始めたらいいのかわからない壮大すぎるサーガの舞台でしかなくなってしまいます。

自分のようなディープなファンならこれからも付き合い続けられますが、様々な人がみることを前提にできない映画に未来はないんじゃ無いのかなと思ってしまって…

今作というよりは、MCUの未来に不安を感じさせられる一作でした

それでもなお、みる価値は存分にあります。
サイファイとしてはかなり楽しめるでしょうし、イースターエッグを探すのも面白いです。

ただ、4を超える評価は上述したようなさまざまな背景からできませんでしたね。

うーん…アントマン&ワスプ&スタチュアのアクション映画が観たいものだ。