春とヒコーキ土岡哲朗

アントマン&ワスプ:クアントマニアの春とヒコーキ土岡哲朗のネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

アントマンは壮大にやるもんじゃないのかも。

期待しすぎちゃってたかも……。公開前の絶賛評ばかり目にしていたのと、MCUの次の祭りに突入するための一本という重要度で、期待が高まっていた。アントマンが小さくなっても大きくなっても、量子の世界には比較対象になる景色がない。だから、「小さくなる」という持ち味が伝わってこなかった。量子の世界も、最初に見せた「不思議な世界」という以上の印象はなく、一体どう特殊なメカニズムがあるのか、どう我々の世界と影響しあうのかの描写がなくて、SFではなくただの幻想空間だった。

一番は、スコットとカーンの因縁が物足りなかった。娘のキャシーを解放してもらうため、スコットはカーンとの取引に応じてしまう。しかし、カーンはキャシーを解放せず、約束を反故にする。それを巨大化したスコットが「約束を破ったな!取引したのに!」と怒って攻撃するのが、スカっとする逆襲始まりのシーンとして描かれている。でも、取引とか約束を破ったとか言うには、ひねりがなさすぎる。そりゃ、悪役が人質解放の約束を守らないのなんて当たり前。予告をみたときは、スコットがカーンに協力して重大な罪を犯し、贖罪も背負った戦いになるのかと思っていた。でも、そんなドラマチックな取引ではかった。

良いところ。主人公側の5人の扱いはとても良い。キャシーとホープ、ピム、ジャネットに血縁はないが、家族で協力したり、トラブルがあっても信じたいという前提でつながっていて、「カーンや量子の世界の説明の映画」になってしまわず、ちゃんと5人をたっぷり見せてくれた。
事前にスター・ウォーズっぽいと聞いていたが、それが分かるところもあった。ジャネットが量子世界の生物と戦うのかと思ったらマブダチだったところは、ランドが初登場したときのハン・ソロとのやり取りのオマージュだろう。SFなので未来というイメージを抱きがちだが、人々の服装や持ち物に部族っぽさがあるのもスター・ウォーズのよう。科学的に進んでいるのではなく「別の育ち方をしている文明」という感じが、宇宙の横の広がりを感じられて良い。

最後に、スコットが陽気に歩きながら、カーンを倒せていないんじゃないか、何か自分のせいで混乱が起きるんじゃないかと不安になるところは怖かった。しかも、それを「たぶん大丈夫」と無視して再び明るく歩いてしまうのが、ヒーローなのに無責任で、不安が増幅した。今後、カーンがもっと大騒動を起こしたときに、今回期待したけど見られなかった、罪を抱えたスコットの苦しみと克服が見られるのだろうか。