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鬼手のmaverickのレビュー・感想・評価

鬼手(2019年製作の映画)
4.1
2019年の韓国映画。2014年のチョン・ウソン主演映画『神の一手』のスピンオフ作品。主演はクォン・サンウ。


『神の一手』と同様に、賭け囲碁を主軸とした格闘アクションが売りとなっている。バキバキに鍛え上げられたクォン・サンウの肉体美に惚れ惚れ。復讐を誓い、ストイックに敵を追い詰めてゆくクールな役柄も魅力だ。スピンオフと聞いていたので前作との絡みを期待したが、ほぼ独立した話であったのは少々残念。逆を言えば本作単体で楽しめるので、前作の鑑賞は必要ない。関連作ということを知らなくても何ら問題なしだ。

囲碁の話であるが、そのルールなどを知らなくても問題ない。知らずとも本作を観れば囲碁に興味が沸いてくる。囲碁といえば地味で年配の人がやるイメージ。それを払拭するに十分な魅力的な作品性だ。

韓国ノワールな世界観。賭け囲碁に興じる人達の闇の世界を描いている。博打はするならほどほどに。コツを掴めば稼げるが、それ相応の危険と隣り合わせである。負けて金を払えなくなるとどうなるか。インチキをして捕まった者の末路は。一歩間違えれば引きずりこまれる修羅の世界。そこで生きる者らの狂気が描かれる。

唯一の肉親である姉を失った少年は、持ち合わせた天才的な囲碁の才能を使って生きることを決意する。賭け囲碁で稼ぐ手腕を徹底的に叩き込まれる主人公のグィス。人里離れた山頂の寺で厳しい修行に明け暮れる。そのぶっ飛んだ設定はまるで熱血バトル漫画の世界観。師匠を失い、一人たくましく成長した主人公。そこから彼の復習が始まる。

囲碁の対局シーンは手に汗握る。まるで漫画の『賭博黙示録カイジ』のようなぶっ飛んだ対戦描写。格闘シーンの演出も冴えており、それらの見せ方に芸術性を感じるほどだ。あり得ないような漫画的な世界観をリアルに落とし込んであるのも見事。どう考えても非現実的なのに、それをあるかもと錯覚させるのは役者の力量によるのも大きい。

肉体改造を施したクォン・サンウの熱演が光る。爽やかイケメンから一気にアウトローに変貌した姿は見事だ。囲碁の天才と思わせる知的さを持ち合わせてるのも良い。本作だけでなく、もっとシリーズ化してほしいぐらいにこのキャラは魅力的だ。『名もなき野良犬の輪舞』のキム・ヒウォン。『密偵』のホ・ソンテなど、渋みのある実力派俳優が物語を盛り上げる。女性キャストはあまり目立たないが、その分渋さを堪能できる作品性である。


スピンオフということで、『神の一手』と比べるとエンタメ性は低い。その分余計なことはそぎ落とし、作品自体がだいぶスタイリッシュだと感じる作りである。願わくば、両方の作品を合作した続編を作ってもらいたい。チョン・ウソンとクォン・サンウの夢の共演を是非。
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