まちゃん

エルヴィスのまちゃんのレビュー・感想・評価

エルヴィス(2022年製作の映画)
4.0
エルヴィス・プレスリー登場の衝撃。知識としては分かっている。70年後の現在、それを実際に経験する事は不可能だ。しかし、この作品を観ればその熱狂の一端は理解出来るのではないか。若きエルヴィスのしなやかな肉体の動きは強烈なリズムを刻んでいる。淑女としての教育を受けた50年代の少女。戸惑う彼女達をエルヴィスの巨大なビートは忽ち飲み込んでいく。本能のままに絶叫する少女達。扇情的と危険視されたのも納得な圧倒的な存在。資料映像では感じられない体感。これは創作物としての伝記映画の大きな価値の一つだと思う。ステージ上では無敵のエルヴィスだが一歩下りると普通の若者だ。彼を操るマネージャー、パーカー大佐。繊細な若者が酷使されて疲弊していく様はエンタメ業界の闇そのものだ。パーカー大佐を演じたトム・ハンクスの一世一代の役作りは必見だ。映画の最後に流される実際のエルヴィスの最後のステージの姿。ショーの最後の曲だろうか、疲れ果て立っている事もおぼつかない。肥満した肉体、脂汗が滲み出て顔色は悪く死相が浮き出ている。その中で歌われる「Unchained Melody」の美しさには涙が出た。世紀のスターの実像に迫る傑作。
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