Ricola

エルヴィスのRicolaのレビュー・感想・評価

エルヴィス(2022年製作の映画)
3.7
近年クイーンが取り上げられた『ボヘミアン・ラプソディ』は、その伝説的アーティストたちの知られざる顔や魅力を伝える意図はもちろん、それと同時にショービジネスの闇を暴くこともテーマとしてあった。
この『エルヴィス』も同様に、エルヴィス・プレスリーという時代を象徴するアーティストとしての顔と、彼自身の顔が描き分けられている。

エルヴィスのマネージャーであったトム・パーカー大佐の視点から、エルビスの人生が語られる回想で物語は進んでいく。


前述の通り、アーティスト「エルヴィス」という具体例にフォーカスが置かれてはいるが、真の主題となっているのは時代の変化と大衆文化、そしてショービジネスの裏側である。

エルヴィスの活躍ぶりと当時の大衆やメディアの騒ぎ方、また目まぐるしく変化する彼の人生の怒濤っぷりが、細かいショットによる繋ぎでよく表されていた。
少年時代からの黒人音楽の影響、腰を振る動き、巻き起こるブーム、そして晩年の孤独と、エルヴィスの栄枯盛衰に沿って、時代の変化やショービジネスの闇が明かされる。

スーパーヒーローになって空へ飛んでいきたいという少年エルヴィスの思い。
rock of eternal へと飛んでいくことを願っていた。エルヴィスは常に子供の頃の夢を忘れないような、純粋な心の持ち主だったとうかがえる。
衛星放送で、また実際に飛行機で彼は世界を飛び回ったという意味では、空を飛べたと言えるかもしれない。

なぜ繊細で優しい心の持ち主ほど、汚い世界に蝕まれて搾取されなければいけないのか。
しかし、エルヴィスは大衆に、社会に、時代に欲され、なるべくしてなったスターであり、彼は人前で歌うことに何よりも喜びを感じていた。
彼の心の内なんて知る由もないけれど、ショービジネスの世界で傷ついた一方でこの世界を愛してもいたはずだと思わずにいられない。
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