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エルヴィスのNowLoadingのレビュー・感想・評価

エルヴィス(2022年製作の映画)
3.8
 本日の一本。クリスマスだというのに映画にふけるとは。でも本作にもクリスマスエピソードはあった。

 トム・ハンクスは基本的にいいヤツしかやらないが、今作はエルヴィス・プレスリーを飼いならすかなりのヴィランである。こういうのなんて言うのだろう。ダメンズって言うのだろうか。ちょっと古いか。エルヴィスが突出した才能を持ちつつ、寂しさを抱える人物(ステージの愛、家族の愛、物欲の愛、男女の愛。愛を満たしたい気持ちはわかる)の弱点を徹底的に突き通す。オトコにないがしろにされながら「ゴメンよ、お前の事を愛してるんだ」の一言でヒモ男を許すOLを観ているかのよう。但し彼はヒモ男ではない。スケールが段違いだ。

 ところどころにアメリカの冷戦期の歴史、差別と流血の歴史をさらりと学べる。そこまでやらんでもボヘラプみたいにチョロっとでいいんだけど、彼はソロアーティストだからロックバンドのようにメンバーの対立を描けなかったのかもしれない(ちょうど「ぼっち・ざ・ろっく!」がバンドの物語)。でもあのバックバンドの紹介位はあっても良かったんじゃないの?

 二人は自立出来きれず、互いがいないと立てない依存関係がこの作品のテーマなのかも。個人間でも一方はヤク、一方はスロットである。この依存関係とカネの泥沼こそが家族の関係を超えてエルヴィスがステージでロックスターとして輝き続ける強みであったのであろうか。後半のインターナショナルホテルについてはなんとも言えないが。

 ブラックミュージックを起源とするゴキゲンなナンバーで楽しく鑑賞できる。話は真っ暗だが、田舎の純白な少年がスターダムにのし上がる様はやっぱり映像映えが完璧だ。
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