豚

エルヴィスの豚のレビュー・感想・評価

エルヴィス(2022年製作の映画)
3.5
神となった偶像

「ロックンロール」というジャンルを作ったひとりであり、アメリカのロック界において最重要にあたる歌手の人生を追ったヒューマンドラマ。
全編、マネージャーであるトムパーカー大佐のモノローグで構成されている不思議な作りで、最初エルヴィスの視点なのか大佐の視点なのか、どっちで観ればいいか混乱してしまった。
有名な曲はたくさんあるんだけれど、日本人的には結構馴染みもなさそうな気がするエルヴィス・プレスリー。
自分が最初に意識したのは、ハイスタのカバーかも知れない…。

エルヴィスの歴史はそのままアメリカの歴史といっても過言ではないのではないだろうか。
ベトナム戦争、ヒッピー、キング牧師、シャロンテート…激動の中にいながら、それでも個を貫き通そうとした姿勢は胸が震える。
それが自身の意思なのか、大佐の思惑なのかは分からない。
けれど、"何かを求めていた"当時のアメリカという国に突き刺さったのは間違いないんだろうなと感じる。

ただ…映画としては(相当カットしたのはわかるけど)結構な冗長感もあって、前半は割と退屈かも知れない。
端々に挟まるエルヴィスの曲も、「ボヘミアン・ラプソディ」のような"現代日本人に馴染み深い名曲群"でいうと薄いので、曲の強さで物語を推進していくのも難しい気がする。
「監獄ロック」や「好きにならずにいられない」といった、稀代の名曲ももちろんあるのだけれど。

主演はオースティンバトラー。
全然知らなかったけど、物凄くエネルギッシュな演技が印象に残った。
正直、主演男優賞あるかも?
もうひとりの主演はトムハンクス。
なんかトムハンクスをスクリーンで観たの久々な気がするな…大好きな俳優のひとり。

さすがはバズラーマンといった感じで、ミュージカル苦手でもまったく問題ないです。
というかミュージカル映画ではないです。
個人的にはもっと歌で推していっても良かったような?
ちょっとドラマ部分が冗長すぎる感はあるかなと思いましたが、終盤にグイッと引きつけてくれる作りはさすがでした。
ピンクのキャデラック、一瞬だけ出てきますが可愛いです。

エンターテインメントの世界は、外から見てるのが幸せ。
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