ゆかちん

エルヴィスのゆかちんのレビュー・感想・評価

エルヴィス(2022年製作の映画)
2.8
役者さんとかは良かったけど、他のミュージシャン映画に比べたらそこまでかな〜って印象。
これは、脚本とか撮り方とか展開のせいなのか、私が他のミュージシャンに比べてエルヴィスについて知らないからなのか。
長いからなのか。

ただ、狂言回しをエルヴィス自身ではなく、ある意味悪者であるトム・パーカー大佐にしてるのは少し工夫してる感じかな。


ザ・ビートルズやクイーンなど後に続く多くのアーティストたちに影響を与え、「世界で最も売れたソロアーティスト」としてギネス認定もされているエルビス・プレスリーの人生を描くーーー。



エルヴィス・プレスリーについての私の知識といえば、有名な曲があるというのと、ブラックミュージックを取り込んで表現した白人…白人のロックンロールの先駆け、という意味で大きな功績がある人というところ。

でも、この映画を見て、この時代に「ブラックミュージックを白人がやる」ことの重大さをより大きく感じた。

今でこそ、違う国や人種、文化の音楽を取り入れて自分なりに表現するのが当たり前だけど、世界もまだ狭い上に、人種差別が厳しい世の中では革命に近いことだったんだろうなぁと。
特に、人種分離が合法化されていた時代のアメリカでなされたというのも。
その辺りを丁寧に描いてるのは良かった!
そして、なぜエルヴィスが黒人の音楽を取り入れられたのか、というのも納得。
黒人居住区で育ったんだね。だから身近に黒人がいて、黒人の音楽があって、ナチュラルに身体に心に浸透していたという。

なるほど。

ただ、このことについて、たまに音楽ファンの意見?みたいなのを見かけるのは、このエルヴィスの功績を称える一方で、黒人の音楽の評価をエルヴィスが取った、みたいな感じ?
んー。まあ、確かに、エルヴィスが始祖ではなく、彼も大きな影響を受けた相手がいるわけで。そこは黒人の音楽なのだからルーツも評価されるべきというのはわかる。
でも、この映画の描き方もだし、多分ご本人自身もなんだろうけど、エルヴィスは黒人の人たちに偏見はなく、ブラックミュージックを心から好きで敬意を持って取り込んできたんだろうかなと。
売れるから黒人音楽を奪って、ではなく、ナチュラルに浸透して気づいたら自分の中にあった、というか。
だから、エルヴィスの功績はすごいと評価していいと思うな〜。もちろん、そのルーツにも敬意を払いながら。


しかし、彼も最初は自分の魅力に気づいてない系だったのか。
そして、腰を小刻みに揺らして踊るのは黒人的なんだね。なるほど。今の時代は人種関係なく踊るからわからんかったけど笑。

最初の女性たちが熱狂するライブシーンはなかなか異様やったな笑。
あの動きがそんなに魅力的なのだろうか…笑。
でも、見たことなかったらビックリなんだろうかな。

そして、瞬く間にスターとなった一方で、保守的な価値観しか受け入れられなかった時代に、ブラックカルチャーを取り入れたパフォーマンスは世間から非難を浴びてしまう。
やがて故郷メンフィスのラスウッド・パークスタジアムでライブを行うことになったエルビスだったが、会場は警察に監視され、マネージャーのトム・パーカーはじめ、警察からはいつもエルビスらしいパフォーマンスを禁止して大人しくやれと命令。
それでも自分の心に素直に従い、いつも通りのパフォーマンスを行ったエルビスのライブはさらなる熱狂を生み、語り継がれるライブのひとつとなる。

ほほー。
これぞ反逆のロックンロール!て感じでかっこよかった。
「ロックンロールとは、自分らしくあれ、ということ」みたいに斉藤和義が言うてたけど、まさにそれですな。

反抗することというより、「自分らしく」を貫こうとすることというか。
それが体制と違うなら反逆みたいになるけど、という。


まあ、それで逮捕されたり、軍隊入れられたりするわけですが。
うむむ。厳しい時代やな。
黒人をそんなに否定するのかと。
新しい価値観への拒否は、いつの時代も繰り返されてきたけど。

でも、こういう流れを見ると、エルヴィスがブラックミュージックやブラックカルチャーを取り入れて人気になったことで、黒人文化への差別や否定が薄まるという効果はあったんじゃないかなーとも。特にこれからの未来を支える若者たちに。そういう意味でも功績はあるのかも。
まあ、そう単純には差別はなくならないんだけど。でも、今のブラックミュージック…ブルースやジャズやヒップホップはかっこいい!みたいになってるのはこういうところから始まってるんだろうなと思うし。


ただ、ここからはエルヴィスがなかなか辛くなっていく。

この時代のミュージシャンにある、「栄光と転落」、その背景に強欲なマネージャー、ということなんだけど。

でも、この強欲なマネージャーがガチ強欲。
そのトム・パーカー大佐役をトム・ハンクスが。
いい人の役が多いイメージのトム・ハンクス。クラウドアトラスでパートによって悪役をやってたの見て思ってたけど、割と悪役も楽しそうに演じてるよな〜。

自分の欲を優先し、エルヴィス自身のことを後に考えていたので強欲で悪徳な感じ。
でも、彼がいなければエルヴィスがここまで売れたのかは謎なところも。
うーんビジネス。
こういう完全悪とは言い切れないものはついて回りますね。


でも、エルヴィスって、アメリカを出たことなかってんな。
そういえばツアーしてるイメージなかった。

そして、その原因がこのパーカー大佐のせいだったとは。

まさに檻に閉じ込められたという感じ。
なんか、見せ物感あるな。。

映画で、ヨーロッパやジャパンに行きたいていうてたの、なんか嬉しかったな。
日本は呼びたがっててんなー。ビートルズもやし、音楽好きな人たちが増えてた時代やもんな。

エルヴィスがトム・パーカー大佐をうまく切って、ツアーしてたらどうなってたんだろう。
後半のような結末にはならなかったのかなぁ。


薬物に逃げてしまうのはお決まりだけど、エルヴィスは他のミュージシャンとかより、なんか可哀想だったなぁ。

あと、映画もやってたんやな。
しかも、そんな名作とかはないという。

本人は苦しみながらな人生だったのかもしれない。
でも、彼が残したものが今もずっと残ってるし、彼に影響を受けた人たちがまた世界を変えたし、そして、その孫的な影響、ひ孫的な影響みたいな人たちがまだまだいることは、凄いことだなぁと。


エルヴィス役をやったオースティン・バトラー、かっこよかった!
歌もうまいし、歌うときの動きとかもコピーしてたらしい。
本人になりきってるのが伝わってきた。
本人映像と比較したら余計わかるんやろな。
脇役で大作は出てたけど、こういうメインに抜擢されるのははじめてなのでは。
今後の活躍も期待やね〜。

最初のライブもやし、ラスウッド・パークのライブも、ホテルの豪華なショーもかっこよかった!

でも、太ったと言われてた時もイケメンやたぞ笑



最後のエルヴィスの本人映像。
あの歌唱がとても重くて深くて良かった。
魂を込めた歌という感じで。。

展開がバタバタして忙しかったけど、最後は何か物悲しさが残った。。。
彼は自分の人生をどう思ってたのかな、悲しかったのかな、でも、これだけの人に歌を届けられたことは幸せだったのかな、と。

映画館で見た方が音楽は良かったのだろうけど、まあ、配信でも見て良かったかな。
また音楽史について少し埋められた。
ゆかちん

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