デッカード

エルヴィスのデッカードのレビュー・感想・評価

エルヴィス(2022年製作の映画)
3.0
エルヴィス・プレスリーの生涯を彼を食いものするパーカー大佐の視点で描く。

後半大佐といびつな関係を続け搾取されながらも歌い続けるエルヴィスは痛々しい。
だがファンに愛され続けることを純粋に望み続けた彼はやはり満足できる二人分の人生を十分に生きたのだと信じたい。

私の知る限りでは「アメリカの象徴」のような存在だったエルヴィス・プレスリーが、実は黒人社会で育ち彼の歌曲やパフォーマンスが黒人音楽に触発され生まれたものだったことは全く知らず驚きだった。ロックンロールについて全く知らなかったことを思い知らされた。

エルヴィスが公民権運動に深い共感を持つシーンもこの映画の新しい発見だった。

ロックンロールの黎明期に突如現れたエルヴィスがセックスアピールに溢れたパフォーマンスで女性たちを熱狂させるコンサートシーンの迫力は圧巻。
それゆえ反社会的と批判され権力者から糾弾される若き日のエルヴィスは、後にアメリカの巨星となった姿しか知らない私には全く別人のストーリーを見ているようで新鮮だった。

映像は全編美しく、巨大なショーを見ているようなエンターテイメントのおもしろさが詰め込まれている。

映画全編はよくまとまっているし人間描写も確かなのだが、エルヴィス・プレスリー自体が私の世代にとっては前の世代のスターだし、逆に遠い過去の人でもないため中途半端な先入観だけはあり個人的に今ひとつ感情移入できなかったのは残念。

ただラストのエルヴィスの実写映像には心を揺さぶる何かがあり、それだけで十分感動的な作品だった。
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