けーはち

エルヴィスのけーはちのレビュー・感想・評価

エルヴィス(2022年製作の映画)
3.7
黒人と白人の音楽、ブルースとカントリーを融合させたロカビリーを始めたエルヴィス・プレスリーの伝記映画。派手な衣装、中性的な髪やメイクにセクシーなくねくねダンスをしてヒーカップで唄い上げる姿は社会に波紋を広げるほど斬新で眩しく、抑圧を超えて若い女性の嬌声を浴びて瞬く間にスターダムに上り、過労と不摂生で早逝。乱暴に纏めると短く太く生きた綺羅びやかな音楽スター人生の類型に収まる。それでも映画的には悪くなくオースティン・バトラーの好演が光るのだが、本作がより重みを置くのは、語り手となる太った興行師トム・パーカー。エルヴィスの才能を見出し売り出すも彼を人形としてコントロール、飼い殺して利益をバクチに使い込む。いわゆる「毒親」のような男。実父に全く存在感がなく、エルヴィスも晩年激太りするため余計に擬似親子感が増す。トム・ハンクスの演技も明らかにクドくて不快感が残る、自覚なき毒親とその爪痕を深く残された子の毒親家庭ドラマとしてエルヴィスの一生を見る映画である。