ナミモト

tick, tick...BOOM!:チック、チック…ブーン!のナミモトのレビュー・感想・評価

3.6
RENTは10年以上前に映画で見ましたが、本作の主人公ジョナサン・ラーソンが、RENTブロードウェイ公演初日前に突然死していた事は、初めて知りました。

時限爆弾が破裂までの秒を刻む音と破裂音、チック、チック、バン!は、あとどれくらい生きられるか、秒読みはすでに始まっている、1秒たりとも、無駄にして生きるな、というメッセージ。
RENTはニューヨークで生活しながら、アーティストを目指す、極貧の若者たちの物語でした。それはジョナサン・ラーソンとその周辺の友人達にとって、90年代の等身大の若者達の物語で、タイトルRENT(家賃)も、キリストが聖書の中で無償に人々へ与え続けるパン(キリストの肉、Bred)の対比として、消費社会の中で誰かに貸しを返し続ける生活を皮肉ったタイトルでもあったように思います。一方で、劇中の歌’Seasons Of Love’の歌詞「52万5600分、1年の長さをあなたは何で測りますか?」に見られるように、人生はいつか終わりのくるものとして、その中で、あなたは何を一年を測る基準として持つのか、という問いかけは、常にジョナサン・ラーソンの中にあった問いなのでしょう。
エイズの蔓延が、友人や、人の死を身近にいくつも経験してきた背景も大きな影響を与えていると思われます。
本作のタイトル、チック、チック、バン!も、人生には終わりがある!時間を無駄にするな!という警告とも捉えられますし、一方で、時間を切り売りする現代人の感覚を皮肉ったものとも捉えられます。この、人生や生きる事への深い思い入れと、現代生活を皮肉る2つのバランスがジョナサン・ラーソンの作品には通底しているのではないでしょうか。
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