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子供はわかってあげないのkmtnのネタバレレビュー・内容・結末

子供はわかってあげない(2020年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

田島列島の作品は「水は海に向かって流れる」しか読んでいないのだけど、本作はそちらと似通ったテイストが散りばめられていて、一作しか読んだことがない私にも分かる「田島列島感」でした。


先日Amazonプライムで配信されていた実写版「水は海に向かって流れる」を30分ほど観て挫折。
ストーリーの筋は一緒なのに、何かが違う。
シリアス過ぎるし、広瀬すずのキャラクター性がかなり変更されていて違和感。


そんな折軽い気持ちで観てみたのが本作。
沖田修一作品であるし、元々評価が高いのは知っていたので良い作品なのだろうとは思っていたが、想像以上の作品。
これは沖田修一がすごいのだろうけど、とにかく「田島列島っぽい」。
原作のあの雰囲気を実写にしてしまうと、漫才だったりコントっぽい、映画的じゃない何かに置き換わってしまう危惧もある中で、しっかり超良質な邦画として完成している。


キャストの話をすれば全員サムズアップしてしまうレベルで最高。
主役の上白石萌歌と細田佳央太の高校生らしい演技の素晴らしさもさることながら、特に誰もが絶賛するであろう豊川悦司の実父役はとてつもなく素晴らしかった。
あんなにリアルにいそうな父親像は凄過ぎる。豊川悦司といえば超イケメンなはずですが、全くそれを感じさせない名演。
ダメ親父……ではあるが愛すべき親父でもある。ダメすぎるとギャグだし、愛すべき親父すぎると違う種類の感動ドラマになってしまう。
その塩梅が絶妙。


良いシーンは色々ある。
おそらく誰もが記憶に残るであろう、学校の屋上から一階への長回し。
最後に上白石萌歌が逆走するところも、何というかカタルシスであるが、あのシーン一つで、上白石萌歌が細田佳央太を好きになる理由の説明ができてしまっているのが凄い。
実際のところ、本作は相手役である細田佳央太って登場時間が長いわけでもないし、特段何かする訳でもない(最後来てくれるのが一番大きな、かつ唯一の見せ場?)んだけど、お互いが両思いになる説得力がちゃんとある。


さらに豊川悦司と上白石萌歌ののほほんとした数日間の暮らし。
これは何がという訳ではないのだけど、永久に見れる。トゥルーマン・ショーみたいに中継してほしいと思える愛らしさ。


「水は海に向かって流れる(上述の通り映画版は途中で挫折)」と話は違うけど、似ている。
実の親の不在。それにの伴う、欠落を各自が抱えている。
親と出会い直すという経験を通じて、本当の意味で成長するという物語は2作ともに共通している。
かつどちらも一応「恋愛もの」いうことで良いと思う。
どちらもたぶん描き方によってはべらぼうに陰鬱な話になりそうなものであるが、どこか明るくて楽しい雰囲気が通底しているのが田島列島らしさ。


後半、ボロボロ泣きながら愛を告白する上白石萌歌の演技は一億点でした。
ここ最近の邦画の中でもかなり名作。
おすすめです!!
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