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ファンファーレが鳴り響くのkazataのレビュー・感想・評価

ファンファーレが鳴り響く(2020年製作の映画)
2.5
"今年見た映画は今年の内にレビュー"を目指して、年末恒例の怒涛の追い込み&駆け込みレビューがしばらく続きますm(_ _)m

『悪の華』的な流れを期待しつつ、「もしかしてこれは酒鬼薔薇聖斗こと"元少年A"に恋しちゃった女子高生の物語じゃないの?」(主人公の名前が"神戸くん"だし…)なんて思いながら途中まではそれなりに期待しつつ見ていたのだけれども……
まず、学校での"いじめアンケート"の件辺りからアレレ…となり、逃避行が始まって"可哀想な巻き込まれカップル"が早々に登場した辺りでトホホ…な徒労感に襲われ、最終的には"マトモ"な側(=「元少年Aなんて死刑でいいから!」と思う世の中の多数派)の視点に収まってしまう健全さにウーン…な印象の映画でした。

ってか、いじめ調査の件のあり得なさがノイズと言うか……この手の問題は『カランコエの花』なんかにも言えることだけど、物語展開上の都合を優先するあまりにリアリティが犠牲にされてる(=「その対応はあり得ないだろ!」というツッコミ不可避)と言うか……だったら、変にシリアスに描くんじゃなくてもっとフィクション度の高い演出(本作の場合は特に冒頭からフィクション度が高いわけだし…)で見せてくれたらいいのに。
(『カランコエの花』よりも本作の方が何万倍も稚拙だけど…)
(しかも、勇気ある告白をした後の「その後が大事だろ!」って部分を平気でオフにしちゃう神経も信じられない!)
(ちなみに、『カランコエの花』ではカースト上位だった笠松くんが本作では最底辺なのがまたどうもね…笠松くんは上位キャラの方が似合うと思うけど)
(ってか、笠松くんって演技巧い印象だったのに、本作はぶっちゃけ微妙だと思う…まぁ彼以上に他のキャストが総じて微妙なんだけども)

きっと、"神戸連続児童殺傷事件"の他にも色々な少年犯罪や、実在する猟奇殺人の要素が散りばめられているんだろうけど、そのどれもが表層的な残虐性(=見せ物的描写)のトレースしかされておらず、各事件の背後にあるものが"ステレオタイプ的な雑さ"で片付けられているのもなんだかなぁ。
(だったら、いっそのこと殺人衝動の理由とかを語らないで欲しい!)
(あとは、『冷たい熱帯魚』をどうしてもやりたかったのね 苦笑)

サイコパスなりの美学や哲学もありそうで無かったし……
("世直し殺人"の破綻が早いのと、殺し方がワンパターン→殺人鬼なりの成長も見えづらい)


少年犯罪(に限らず凶悪犯罪全般)についての自分の意見と言うか立場は、「なぜその事件が起こったのか?」を詳しく知りたいと思う派でして……
もちろん、犯した罪を肯定したり擁護することはできないけど、加害者の動機や心情はなるべく理解したいと思っていて、その上で、「加害者と自分はどこが違うのか?=自分はなぜ加害者にならなかったのか?」を考えたりしてみることが大切なんじゃないかな、って日頃から思っています。
(この辺は『許された子どもたち』のレビュー欄でも触れてますが…理解はできなくても想像できるなら想像したいと言うか…)
(自分が被害者になっていないからこそそう思えるんだろうし、「もし被害者側になった時に加害者に対して果たして今と同じように思えるのか?」は、その立場になってみないとわからないけれども…)

本作には「殺すのなんて簡単なんだからね。」というコピーが付けられているけれど、だったら同時に「殺さないことの難しさ」も描いてトコトン対決させて欲しかったな……なんて思いました。
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