QTaka

東京の恋人のQTakaのレビュー・感想・評価

東京の恋人(2019年製作の映画)
4.1
ふと振り返った時、そこに見えたあの頃の自分。
その頃の自分と恋人と。
それだけで良かったし、それで十分だった。
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眩しさが残る映画でした。
大学時代に、やり残したこと、やりきれなかったこと、断ち切れなかった思い。
そういう、忘れかけてた諸々の事を、ギュッと濃縮してスクリーンに描いた映画。
監督が物語のベースに置いた東京60WATTSの曲は、何か昭和の香りのする歌詞とメロディー。
そしてスクリーンに映し出された二人の姿も、何か懐かしさを感じさせる。
それは、多分、懐かしさだけじゃなく、もっといろいろな思いを含めて表現されているからだろう。
誰もが、多くの人々が通り抜けきた”青春”っていう時間が、そこに見えてくる。
そして、その時間を、”通り過ぎた過去”として見ている。
この映画は、そういう今の自分に気づかせてくれる。
だから、ただ懐かしさに感傷的になるのみならず、何か痛みや苦しさを感じてしまうのだろう。
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映画の中に過ぎた時間を見るというテーマは、特別なことではないと思う。
それぞれの体験、記憶を思い起こすと、そこにドラマが見えてくる。
でも、その振り返って見えてくる時間に、多くの者が共感してしまうのは、それぞれの記憶に共通する部分があるからだろう。
あるいは、その記憶と向き合う事に共通の思いがあるのだろう。
その思いに向き合う事は、無意味じゃないし、むしろ重要だと思う。
向き合ったところで、何が始まるものでもないのは、映画のエンディングとおなじなのだけれど。
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男目線で見るならば、かつての夢は彼女の姿と共に蘇るんでしょうね。
振り返ってみても、取り戻すことのできない時がそこに浮かんでくるのは、亡霊を見るかのようで、怖さすら感じる。
あるいは、「夢破れて、女あり」な〜んてことなのかな。
その視点で、この映画のヒロイン”川上奈々美”さんは、ステキでしたね。
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音楽から始まったこの映画は、脚本、キャスト、そして映像に至るまで、堪能できる一本だったと思いました。
クラファンで支援してよかったと思いました。
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