Yui

トゥルーへの手紙のYuiのレビュー・感想・評価

トゥルーへの手紙(2004年製作の映画)
3.8
写真家のブルース・ウェバーは9.11時に撮影のためNYの自宅を離れており、その時愛犬達は自宅に。残してきた愛犬達の安否が分からず心配が尽きなかった経験から、愛犬の末っ子「トゥルー」へ綴った手紙を通して、平和への思いを形にしたドキュメンタリー。

あらすじを聞いて想像したのは、もふもふわんこの泣けるストーリーだったのですが、予想とは全然違う映画でした。

もちろんわんこ達はめちゃくちゃ可愛くて、画面に現れるだけでにんまり頬が緩んでしまうのですが、そういったシーンは想像よりも少なく、キング牧師の演説や、ジョン・レノンによる反戦メッセージ、第二次世界大戦やベトナム戦争など、自国アメリカへの戒めとも思える映像が多く流れます。

ストーリーもあまりなく、ホームビデオのような、監督の頭の中を整理するかのような内容にも取れて、面白いのはそれが私たちにではなく、愛犬トゥルーに向けられたものだということ。

作品として観ればパンチは少ないかもしれませんが、9.11の時にNYに愛犬を残してきてしまったという恐ろしい経験を踏まえれば、平和に思いを馳せる時、愛犬達の事を一番に考える気持ちはめちゃくちゃ理解出来ます。むしろブルース監督の気持ちを想像しただけで、怖すぎて涙が出てしまう。愛するものの安全が分からない時間は人生で経験したくないことですよね。そう考えると、とても愛を感じる作品でした。

そして、何よりセンス抜群の映像と音楽。有名で凄い写真家さんなんだと、素人目にも分かるセンス溢れるショットの数々は眼福でした。この監督さん、チェット・ベイカーも撮ってらっしゃるようで。DVDがあれば是非観たい!

知性を感じる作品の中で、テーマになっているトゥルーへの手紙と平和。愛らしいわんこ達が走り回ったり、くつろいだり、泳いだりしているシーンを観ていると、この平和な幸せがずっと続けばいいのにと思わずにはいられません。その感覚には凄く共感しました。

万人受けはしそうにないけど、私は好きな作品だったなぁ。

エリザベス・テイラーのストーリーがとても印象に残っています。


2021-395
Yui

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