ミケランジェロの生涯を描いた伝記映画。教皇の死によりローマの権力が推移する中、デッラローヴェレ家とメディチ家の狭間で揺れながら、ダンテの偉業と影に怯えるミケランジェロがサン・ロレンツォ大聖堂のファサード建築に挑む苦悩を描く。
歴史や美術に詳しい方ならご存知かもしれないが、このサン・ロレンツォ大聖堂のファサードは未完である。
つまりこの映画で2時間以上かけて、ミケランジェロは何も成し遂げないのである。
2時間以上ある本編のうちミケランジェロが作業っぽいことしてる描写は10分くらいしかない。
あとは大体一人で風呂にも入らず蹲っているか、歩き回りながらぶつぶつとシェイクスピア劇みたいな独白をするか、お金の交渉をしてるかである。
偉人が偉業を成し遂げる伝記映画を求めて観に行くと盛大な肩透かしを食らうことになる。
この映画でミケランジェロが成し遂げたのは巨大な彫刻用の石を山から下ろす事と弟子Ｂがデキ婚する事くらいである。
そんな感じの映画ではあるが、ミケランジェロが作品のインスピレーションを受けるシーンやルネッサンス期のイタリアのリアルな描写は絵画を切り取ったような芸術性があり一見の価値あり。
ダンテのくだりなどその道の専門家にはハッとさせる内容なのかもしれないが、残念なことに私はこの映画を充分に解釈するには予備知識が足りなかったかもしれない。
