シンタロー

秘密の儀式のシンタローのレビュー・感想・評価

秘密の儀式(1968年製作の映画)
3.8
自らの不注意で最愛の娘を亡くしてしまったレオノーラは、失意の日々から抜け出せず、中年の娼婦に身を落としていた。ある日、バスの中で突然"マミー"と声をかけてきた若い娘チェンチ。豪邸で孤独に暮らすチェンチは、母親の死が受け入れられず、精神を病んでいた。誘われるがままに家についてきたレオノーラは、チェンチの亡き母が自分にそっくりだったことを知る。付きまとうチェンチに、いつしか情が移り、2人の奇妙な共同生活が始まるのだが…。
ダーク・ボガードとの一連の作品で高い評価を得たジョセフ・ロージーが「夕なぎ」に続いて、大女優エリザベス・テイラーを主演に迎えたミステリー。
金髪のウィッグを外すリズのカットから始まり、妖しげな音楽…目がイッちゃってるミア・ファローが登場して"マミー"…もう不穏確定です。ここから約30分、遊び半分の母娘ごっこだったはずが、互いの傷、孤独を埋め合ううちに、まるで本当の母娘のような関係へ変化していくまでを、ほぼ2人だけのお芝居で描き切ります。ミアのエキセントリックな演技は言わずもがな、ずば抜けていますが、それをしっかり受け止めるリズの包容力も凄い。そこへ卑猥な言葉を連発する、不気味極まりない義父アルバートの登場により、不穏から破綻へと加速していきます。
主演のエリザベス・テイラーは撮影時36歳。66年の「バージニアウルフなんかこわくない」で2度目のアカデミー賞主演女優賞を受賞して、大女優の風格を漂わせていましたが、大食い、大酒、喫煙等、激しかったことは有名で、本作は年齢よりだいぶ老けて見えます。開き直ったように、貪り食ってからのゲップを披露したり、太った牛女と罵られたり、自虐的な芝居もこなす貫禄ぶりです。ミア・ファローは代表作「ローズマリーの赤ちゃん」と同年の作品ですが、撮影はこちらが先だったようです。幼児返りしたロリータ演技や、ロバート・ミッチャムとの近親相姦まがいの場面等、ローズマリー以上に狂気じみていて最高です。2人の対照的なお芝居、衣装、身のこなし、佇まいを鑑賞するだけでも、十分観る価値があると思います。
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