しの

ブラックアダムのしののレビュー・感想・評価

ブラックアダム(2022年製作の映画)
3.5
冒頭で説明を済ませたら後はほぼひっきりなしにアクションが続き、デカい音とスローモーションを多用しすぎで胃もたれしてくる。ここまで見せ場を詰め込んだ構成も珍しい。ドラマとしては雑な部分もあるが、大味アイドル映画と思いきやヒーロー映画としての落とし所は意外とちゃんとしている。

そもそもブラックアダムがそこまでアンチヒーローでもなく、ちょっと話が通じにくいだけの良い奴なので、そこは宣伝が悪い。対抗馬として不殺主義のJSAが登場するが、そもそもJLだって街破壊しまくってるしコイツらも街破壊しまくってるしで倫理的対抗になっていない。ここは正直どうなのという部分。例えばJSAの掲げる不殺主義の正義が優勢になる展開があればまだ良いと思うのだが、そういうものがほぼ無い。うち2人の友情がクローズアップされるくらいでテーマに寄与していないし、そもそもこのJSAのメンバーの能力に既視感ありまくりなので、持て余している感じはしてしまう。

一方、国民に「主権」を取り戻す話としては興味深い。正義ヅラして肝心な時に役に立たないJSAと、勇者として持て囃されるブラックアダムの対比は結局そこまで深掘りされずに終わるが、しかし国民主権の国においてヒーローはどこに存在すべきか? の答えとしては真っ当な落とし所を提示している。

ただ、それなら終盤でフィーチャーするのは民衆の闘いであるべきだが、ここが取ってつけたような数シーンで終わってしまう(入れるだけ偉いが)ので、物足りなさがある。ブラックアダムが最後の最後に取る行動はスカッとするが、その選択肢は本来民衆が選んでほしいのだが……とも思うのだ。

もっといえば、冒頭で「子どもに暴力を教えないで」と言っておいて、結局暴力で解決してるのはなんだかズルい気もする。もちろん、中盤のミスリード展開と終盤の落とし所によって、ヒーローという精神性の話に持っていってはいるのだが、うまく誤魔化された感じがしないでもない。

とはいえ、ドウェイン・ジョンソン映画としての要素、近年流行りのキャラクターワチャワチャ要素、DCらしいド派手なアクション要素を思い切った構成でまとめつつ、前述のようにヒーロー映画として独自の着眼点もあり、自分はそこそこ満足できる一本だった。この豪快さと、本作で描かれたチームの在り方や「守護者」というワードは、DCUの再始動にも重要かもしれない。
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