レオン

バビロンのレオンのレビュー・感想・評価

バビロン(2021年製作の映画)
4.5
とんでもない作品。
爆発的な混沌と、圧倒する状況描写が、交互に襲って来る!
どのシーンも圧巻の画力で、物語の進展にどう関係あるのか分からぬシーンでも、そんな事は関係なしと言わんばかりに引き込み、音のシャワーまで浴びせる。

それはシーンが変わる度に違う映画が始まったのか、と思うほど異なった演出で、見る者をスクリーンに釘付けに。
私は断片的な物語は好みではないのだが、
各シーンの魅力がずば抜けていれば、そんな事は関係なくなる、という事を長年の映画歴で初めて知ることに。

ある意味では実験的な映画とも感じる。
これほどシーン毎にタッチが変わっていて、果たして1本の映画として成り立つのか?
でも次第にそれが、3人の主人公を通じて、
ハリウッドが無声映画から、トーキーへ変化する様を描いた叙事詩を、部分的な出来事で表現しているのだ、と分かる。
(かつて栄えた古代都市バビロンをハリウッドで例えているが、マーゴット役とブラピ役は実在したサイレント時代の人気俳優をモデルにしている)

結果的に私は3時間5分を長く感じず、堪能出来ました。

↓ややネタバレ

史上初の長編トーキー映画 1927年公開「ジャズ・シンガー」や、ジーン・ケリーの「雨に唄えば」の実際映像など、ハリウッド初期のオマージュ映像も多々描かれていて、
初期には音と映像を同時に撮る事が、どれほど骨が折れる事かを、分からせるメイキング的なシーン等もあり。

冒頭は、のどかな田舎シーン的映像から、大音量エログロなんでも狂宴、多数エキストラのハチャメチャ活劇、躍動ダンス、喧騒なスタジオ、無音の二人だけの人生論、怪奇ゲテモノ探検、2001年宇宙の旅的ラスト映像、等々よくこれだけ多種多彩なシーンを盛り込んだなと感心しきり。

そして今作はロケーションは違えど、ほぼ同じ時代の背景で構成されているのに、全く違う印象をシーン毎に与えている。 まさに演出の巧みさが伝わる。
(シーン毎に異なる監督が撮っているのかと思うほど)
ララランドでは、凝ったオブジェ的セットも変化に貢献していたが、今作は通常セットがほとんどなのに。

そして、ゲロシーン等やや演出過剰と思えるシーンも、ネリーのクレイジーでコメディータッチな言動がそれほど違和感を感じなくさせている。

マーゴットの体当たり演技も注目だが、終盤ブラッド・ピットが一瞬の表情変化で、その後を暗示させるようなシーンがある。
私がアカデミー会員だったら、この「一瞬の表情」の本物演技に主演男優賞を贈呈したい・・。

残念ながら今作はアカデミー賞には、「作曲賞」「美術賞」「衣装デザイン賞」のアート部門しかノミネートされておらず、主要な賞にはエントリーなし・・。
が、「作品賞」の有力候補になっている、「イニシェリン島の精霊」より、私的には遙かに魅力的で面白かった。 そして見直したいシーンも多数ある。
(アカデミー賞の選考基準に、ますます不信感を覚える・・)
チャゼル監督は「ラ・ラ・ランド」で監督賞を受賞しているが、今作の方が断然それにふさわしいと感じた。

評価は分かれると思うが映画ファンなら必見で、あなた個人にはどう映るか、試金石となるかも♪
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