ぴよまろ

バビロンのぴよまろのレビュー・感想・評価

バビロン(2021年製作の映画)
4.0
サイレント映画からトーキー映画へと移り変わる1920年代ハリウッドを舞台に、映画の世界の移り変わりに翻弄される映画関係者を描いた、夢と狂乱と映画愛の作品。

サイレント映画からトーキー映画の変革が、ただの技術革新にとどまらず、作品作りの根底が変わったということが、痛いほどに伝わってきました。映像に音がつき、出来なかったことが出来るようになったと同時に、それまで出来ていたことが出来なくなり、それによって凋落していく者も現れるという、時代の変化が完璧な形で語られていました。

序盤のサイレント映画撮影の狂乱でメチャクチャなシーンと、トーキー映画撮影の制約だらけの窮屈なシーンの対比によって、時代の移り変わりが描かれ、この変革によって、自分の限界がどこにあるかが明確になってしまうという描写が素晴らしかったです。時代が変わった結果、ある人は姿を消し、ある人は元いた場所に戻り、ある人は・・・、というそれぞれの行末もリアル。

最終盤、サイレントからトーキー、そしてテクニカルカラーへと時代はさらに進んだことが示され、かつて語られた「重要で長く続くものの一部になりたい」という言葉が、いつの間にか叶っていたことを知る姿は最高でした。時代に翻弄されながらも、連綿と続く映画の歴史の一部になれたという描写には、心を動かされました。

デイミアン・チャゼル監督の広い意味での映画愛が爆発した結果、映画の力を信じさせてくれる作品でした。
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