えむ

バビロンのえむのレビュー・感想・評価

バビロン(2021年製作の映画)
4.0
これはさしずめエキセントリックでカオスで淫靡でダークなラ・ラ・ランド。
その当時の映画業界に渦巻くエゴとプライドと狂気と混乱がこれでもかと描きこまれる。

正直いって、もう清々しいほどに下品でゲスでカオスなので、「古い映画の時代の業界話」と聞いて、クラーク・ゲーブルとかあの手の「品」みたいなものを期待した人にはかなりの苦行ではあると思う。
実際私の前にいたおじいちゃまは耐えきれずに途中で帰った。

けど、そこはただ下品なだけではなく、そこに込められたものがたくさん感じられたので、私は観ていて「たぎる」クチでした。

あくまでどこかに夢を見ていたい人、ロマンチックさを求める人は、ラ・ラ・ランドの方をどうぞ。笑

女優として売れたいネリーと映画業界で働く夢を持つマニー、銀幕のスター、ジャック。
ネリーとマニー、マニーとジャック、ジャックと業界の人々、という風に、群像劇のように切り取り部分が切り替えられていくので、3時間超えがあっという間だった。

しかもそろそろ閉じにかかるかと思ったところで、トビーマグワイア投入で、もうひと声怒涛の展開。
このタイミングが絶妙。

かなり衝撃的なシーンの連続だけれど、根底には、時代の移り変わりで技術や流行りや俳優は変わっていくし、改良も改悪もあるけれど、「映画」そのものや「映画業界」はどんな時代も変わらずそこに変わらず残り続けるのだというメッセージが感じられて、これは監督の、壮大な「映画」へのラブレターなんだなと思った。
ラブレターにしてはいささか狂乱に満ち過ぎてるけども。

この手の映画はあまり細かいことを書いても野暮というもの。
これは「ともかく全身で浴びてらっしゃい」というタイプの映画、とだけ申し上げておきましょう。
えむ

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