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バビロンのYUIのレビュー・感想・評価

バビロン(2021年製作の映画)
3.9

映画の光と影 賛否両論の評価も納得、ただ監督のことは好きになります‥

3時間という長編に集中力がもつか不安を抱きながら鑑賞しましたが、あっという間‥全く飽きませんでした(主観ですが‥)ただ、鑑賞後に自分の感情を整理するまで時間を要し、なんとか今から書き始めようという気になりました笑笑

⚠️以下ネタバレを含みますのでご了承ください⚠️

なんというか、書き残しておきたいことが多すぎてどのように感想をまとめれば良いか分からなかったので、ひとまず各登場人物、音楽、映画史、映画の主張 というカテゴリーに分けて書いていこうかなと思います(元々語彙力がないので読みにくい点はご了承くださいませ‥)

■ マニー・トレス
映画の主人公(だと思っている)、メキシコ生まれの映画界を夢見る青年。のちに大物女優として一世を風靡するネリーを思い続ける。アシスタントから映画会社の重役になる過程が突然すぎてえ!?と戸惑いましたが、映画を思う気持ちは人一倍です。サイレントからトーキーに流れが変わる際、これだ!とすぐに電話で連絡する場面が印象的。終始全力で駆け抜ける人間性が魅力的です。ネリーに見惚れる場面がなんかありますが、まっすぐな瞳に惹きつけられる、、。あえて無名(ではないですが)の役者さんを持ってくることでジャックやネリーと一線引かれたような印象を持ちます。映画界の改革を夢見る一方で、純粋さから遠ざかる映画業界に飲み込まれる点が切ないのです。

■ジャックコンラッド
ブラピが適任!というばかり、映画スターが映画スターを演じる点が面白い。サイレントからトーキーに変わる世の中で波に乗れずサイレント映画に取り残されていく。ただ、ジャック自身、汚いハリウッド時代から映画界の改革を夢見ていた点に変わりはなく、改革の必要性や低俗な人間によって映画が確立された主張を強く述べる場面もあり、音楽なしにジャックの台詞が続く場面が印象的です。エリノアが言うように、ジャックが悪いわけではない。人柄、顔、声、何か欠落したいわけではないのです。それが一番胸に刺さるのでしょう。自分の演技が下手で人気が落ちたとかであれば怒りの矛先が明確なので‥。ただ、自殺するまでの場面はもう少し華を持たせても(というか、もう少しジャックにフォーカスしても)よかったのでは、、と思ってしまった。切ない(二回目)。

■ネリーラロイ
ひょんなきっかけで大物女優に。何度でも涙を流せることが注目の的に。ジャックと同様に、サイレントに取り残された役者の1人。博打や薬物に溺れてしまう、悲しい最期。なんというか、、、マーゴットロビーが大物すぎて、、マーゴットロビーという役者の名の壁に守られている感じが少し惜しい、、と、映画評論家の感想に同意です。初めのシーンのパーティーでもっと裸体を曝け出したり、(嘔吐するシーンはありましたが‥)汚さを露骨に出していたらより魅力的だったかもしれません(矛盾していますが笑)

■エリノア
ゴシップ、コラムニスト。自分はカメラに映らない分、ゴキブリとして役者が死んでも生き延びる。家(映画)がなくなっても生きていく道がある。カメラに映る人間は儚い、一方で死んでからも亡霊として誰かの心に宿る可能性はある、とジャックにいうシーンが印象的。これって、現代のマスコミ、芸能界においても同じだなと思います。自分たちがなにかするわけでなく、なにかをする人間たちを追い、その人が死んでも、自分は他のゴシップを見つければ生き延びる。人間って、ゴキブリ以下ですし、この構図は100年以上経った今でも何一つ変わっていない事実に悲しくなりました。

■シドニー
トランペット奏者。トーキー映画では自身も役者としてカメラに立つ一方で、容姿など音以外のことを求められ苦悩する男性です。自分だってカメラに映りたい、と、マニーに訴えた場面から、もうここには来ないと撮影現場から去る対極的な行動が映画界の変容を物語っていますよね。ただ、シドニーは最後までトランペット奏者である信念を貫き、自身の思う正しい道を選択し進んでゆきます。この映画の中で唯一人生において光を見出せたハッピーエンド?な方かもしれません笑

■音楽
ハリウッドを象徴するリズミカルな音楽、ララランドやセッションに続き、流石だと感じました。完全に麻薬です。音に呑まれます。音楽のおかげで時間もあっという間、、。そして静との使い分けが上手いのです。ジャックの台詞で静まったりだとか、監督の伝えたい台詞は音をなくし印象を持たせているような感じです。昨日からずっとサウンドトラックを聴いております、、

■映画史
時代背景はサイレントからトーキーに変わる時代、ハリウッドからNYへの変容の時代です。主人公は実際に存在した役者さんをオマージュしているらしく、その方の作品も見てみたいです。現場はうるさいけれど映画は無声のサイレントから、映画に音はついたけれど現場は物音ひとつたてられないトーキーへの変わっていきます。そして、徐々に映画に新しさ、物珍しさを求めるあまり非人道的なことをするものまで現れたり‥純粋に、発展させたい気持ちでいたネリー、ジャック、マニーは時代の汚い?渦に飲まれてしまう、切ないのです。なんというか、人間がつくづく嫌いになってしまう(また言いそう笑笑)勿論、あくまでフィクションであることを前提に鑑賞しなければなりませんが。人間の行き着く先に、一体何があるのでしょう。映画だけでなく、人間が生み出すものひとつひとつ、汚く見えて来ます。純粋な気持ちでは何もできない、と。

■映画の主張
賛否分かれる点の一つに、ラストシーンの影響が大きいと思います。時が経ち、マニーがロサンゼルスに戻り「雨に唄えば」をみて、自分が映画の成長に携わったことを噛み締め、最後は笑顔で終わるですが‥
監督の映画愛は伝わるのです、、ただ、鑑賞者がそれに追いつかない、というか、、。この映画の物語にラストスパートでアバターまでいっては飛躍し過ぎている感じがしました。マニーの時代にCG技術はまだ発達していないので、、つまり、監督はラストで、物語を超越し2023年の視聴者に向けて映画史の素晴らしさを伝えているのだと思いますが、それを3時間の映画に収めることは不可能なのです。だから、もし、映画史の素晴らしさを主張するのであれば、素晴らしき映画音響の世界(タイトル違うかもしれませんが)のような映画で主張すべき、、だと思ってしまうのです。マニーの生きた軌跡を回想するのでとどめていれば納得できたのですが、、。ただ、私はこれは否定しているのではなく、監督が映画を愛し、伝えたいことが山ほどある!という気持ちはとても感じたので、次作を期待したい、という気持ちが高まりました笑(何様だよ、って感じですが笑)

何事も、自身の主張を表現するのって難しいのですね。特に監督のような、映画界のトップにいる方が映画にどのような感情を抱いているのか、それを一つの映画で収めるのは無理なのですね。それをわかってあえてこのような、中途半端(という言い方は良くないのですが、語彙力がなくて申し訳ない)な映画を作っているのであれば凄い、、。


最後になりますが、、一番好きな登場人物はリー・ジュン・リーです、、惚れました。(登場人物の感想言ってないじゃない!)

過激でR指定のある映画ですが、、アドレナリン貯めてもう一度見て、意気消沈して死にたいです笑
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