2023 02 21
むっずー。語り口むっずー。
私は、『セッション』はいわく付きの良作だと思うが、『ラ・ラ・ランド』には良いところをほとんど見出せない派の人です。後者の理由は、テーマであるハリウッド/映画賛歌が虚構に感じたから。『バビロン』を観た後だと、『ラ・ラ・ランド』は良くも悪くもハリウッドの華やかな面しか描いてないんだからそりゃ虚構だろ!とセルフツッコミしたくなるが、それとも少し違くて。『ラ・ラ・ランド』は、なんか、安いクレヨンで描いた自称画家の絵みたいな印象を、初めて観た時から感じている。
で、今回は意図的に『ラ・ラ・ランド』の裏側を描いてみたわけで(俺は全くわからないけど、『ラ・ラ・ランド』の劇伴がサンプルされて今作の新劇伴になってるみたいですね)。
結果から言えば、支離滅裂で、大袈裟で、「チャゼルにはまだ早い/技量不足」。ど初っ端のロスコー・アーバックルの事件を筆頭に、この事件/このシーンを入れたいんだろうな、ってシーンの切り貼りでしかない印象。
でもややこしいのは、そもそも映画って、良いシーンが撮れたからというだけの理由で脚本が変わったり(そもそも映画における起承転結という概念が確立されきっていない時代の話)したわけで。『バビロン』もそんな手法を取っている…と言えば聞こえはいいが、実際破綻している。
「映画」についての映画として、シークエンスごとに「うーん、これはナシだろう」と「案外イイ!」と何度も揺さぶられながら観たが、最後の、マイブリッジの馬から『アバター』までの映画の変遷集で冷めた。チャゼルよ、『バビロン』はそこまでの説得力のある映画になったのか?
とは言ってもマーゴット・ロビーは凄すぎる。ハーレイ・クイン、『アイ、トーニャ』で培われた身体での表現はまじで白眉。ギャンブルで負けてマニーのもとに駆け込み泣きじゃくるネリー、求婚されてマニーへの愛を自覚するネリーの泣き演技もたまらない。泣き顔はフローレンス・ピュー一択だと思っていたが、マーゴット・ロビーが躍り出た。
惜しかったなと思うのは、落ちぶれ始めたジャックをもっとダサく、且つカッコよく描けたのではないかという点。個人的に、落ちぶれていく、あるいは老いてゆく男が現状を認める話が大好きなのだが(例『ローガン』、『クリード』のスタローン)、『バビロン』もそこにもっと焦点を当ててほしかったっていう俺のワガママ。自殺直前、ベルボーイ?にポッケの持ち金全部渡して言った"The future is yours" に痺れたから尚更。
タランティーノ『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』、フィンチャー『マンク』、ジョーダン・ピール『Nope』の株が必然と上がり、スピルバーグ『フェイブルマンズ』の期待がさらに高まる、というのが観た人の総意じゃないでしょうか。
最後にひとつだけ。レッチリのフリー、カッコいい!