cinemageek

バビロンのcinemageekのレビュー・感想・評価

バビロン(2021年製作の映画)
3.9
バビロン

監督・脚本/デイミアン・チャゼル
セッション(14)で一躍知られる監督
ラ・ラ・ランド(16)で アカデミー賞監督賞を受賞

ファーストマン(18)では宇宙飛行士ニール・アームストロングの物語を描いている。



出演/
ブラッド・ピット
マーゴット・ロビー

ディエゴ・カルバ(映画アシスタント→プロデューサー)

ジョヴァン・アデポ(トランペット奏者)


この4人の人生を描いた群像劇になっている。


OPは高台の上にあるセレブの豪邸に象を運ぶシーンから始まる
そのセレブのパーティに千載一遇のチャンスを狙って参加しようとするネリー・ラロイ(マーゴット・ロビー)。彼女を助ける使用人のマニー(ディエゴ・カルバ)。
サイレント映画の大スタージャック・コンラッド(ブラッド・ピット)
そしてバンドのトランペット担当としてシドニー(ジョヴァン・アデポ)も参加している。

ネリーは運良く端役をもらうことができ、
マニーは大スターのジャックの付き人のような形で映画に関わることに
シドニーはMGM重役から名刺をもらうことからそれぞれの人生が大きく動き出すのだが…

時代はサイレントからトーキーへと変わる直前のハリウッド。
大きなうねりがハリウッド全体を包もうしていく。

その変化に順応できる人とできない人。
新たな「声の演技」に苦悩する人
新たな視点を雑談の中で見つけて這い上がる人
今の楽しいに溺れる人など
それぞれの人生の歯車が少しずつズレていくのだが…


フェデリコ・フェリーニ監督に影響を受けたといわれるデイミアン・チャゼル監督らしい象を登場させたオープニングから始まってトーキー時代が始まった代表的な存在として「雨に唄えば」を全面に押し出すところ。
そして新時代を迎えて今にいたるまでの映画の歴史遍歴を映すラスト直前など
映画大好き人間のデイミアン・チャゼルらしい演出に満ちた1本

黄金期の俳優・ジャックが闊歩するハリウッドを永遠の都バビロンに見立てたようなテイストから一点栄枯盛衰(えいこせいすい)の流れにしているシナリオは引き込まれてしまう。


グロにエロにゲロにドラッグをポイントで出すことで
下品さも特徴でもあった時代を表している…ともいえるが、直接的な表現は見る人をドン引きさせる部分にもつながっている。
ああいったシーンはもうちょっと「らしさ」を見せるだけでいいのにもろに見せちゃうから、そういった演出に耐性ない人には辛いものだろう





大スターだったジャック・コンラットと年配の映画評論家/ゴシップ記者の会話は元ハリウッド大スターであった往年の名優たちへのレクイエムにも聴こえてくるだけの、深みのある会話劇になっている。
あのシーンがあるから、この映画を短絡的な低評価にできない…という部分もある。


ブラッド・ピットも実年齢で60歳になろうかと言う年齢。
かれもリアルに過去とは違う立ち位置になってきているのを感じているからこその演技の良さがある。
リバー・ランズ・スルー・イット92)
トゥルー・ロマンス(93)
インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア(94)
で注目され、

セブン(95)
で一躍一般層にもイケメンで認識され
12モンキーズ(95)
で演技の幅を見せてくれてたことを考えると彼の現役とは言え、年齢的になにかを感じているのかもしれない。

マーゴット・ロビーは
アメリカのTVドラマ『PAN AM/パンナム』のローラ・キャメロン役でしられるがやっぱり何と言っても
ハーレクインだろう。
個人的にはウルフ・オブ・ウォールストリート(13)だがその後の
マネー・ショート(15)のカメオ出演のほうがインパクトがあった

彼女のはっちゃけ女優の演技は素晴らしく、イライラとするほどの バカさかげんと精神分裂してんじゃないかってくらいに、自己肯定のない女性の雰囲気を見事に演じ分けている

おちゃめでチャーミングで、ぶっ飛んだキャラクターは強烈なインパクト。




「ラ・ラ・ランド」と同じようなベクトル感
というか
裏・ラ・ラ・ランド
ブラック ラ・ラ・ランド
というべき作品かもしれない

屋外撮影中に事故で人が事故死をしても、
「すぐに誰かを探せ!」
なんてシーンなど
「あの時代はむちゃくちゃだったんだよ」
という演出の数々は行き過ぎ感もある。そこを時代を切り取って描いた演出と捉えるか
やり過ぎだわ
と捉えるかで評価は分かれるが、監督自身は分かってしていると思われる。
それくらいぶっ飛んだ、尖った演出が随所に入っている。


いずれにしても、
サイレントからトーキーへと変化する「映画界の産業革命」の一部を残す意味合いとしてもこの映画の価値はあるのかもしれない


ただ3時間9分という長さだけは……いかがなものか…
というのと、デイミアン・チャゼルの
「好きな映画のオマージュを散りばめました!見てくれ!」
という強烈なメッセージは伝わってくる…けど、くどいほど繰り返した後にラスト10分で走馬灯のように見せる演出は過剰感てんこ盛りと言われても仕方ないのかもしれない。


この映画を観た後「雨に唄えば」を見ると、
「雨に唄えば」が以下に同じようなサイレントからトーキーへの移り変わりの時代を描いた、名作であるかが再認識できてしまう。



災いなるかなバビロン、そのもろもろの神の像は砕けて地に伏したり。
ここでくだけた神の像は
ジャック・コンラッド(ブラッド・ピット)なのか
ネリー・ラロイ(マーゴット・ロビー)なのか
マニー(ディエゴ・カルバ/映画アシスタント→プロデューサー)
シドニー(ジョヴァン・アデポ(トランペット奏者))
なのかは、劇場のスクリーンでお確かめください。


https://www.youtube.com/watch?v=0xcpHeVKX1s
cinemageek

cinemageek