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バビロンのmadokaaaのレビュー・感想・評価

バビロン(2021年製作の映画)
3.9
否定的な意見も多い本作ですが、わたしは好きです。

監督は「ラ・ラ・ランド」でアカデミー監督賞を史上最年少で受賞したデイミアン・チャゼル。
ちなみに「セッション」も好み。

時代はサイレント映画からトーキーへと移り変わろうとする1920年代のハリウッド。

サイレント映画の大スター、ジャック(ブラッド・ピット)は毎晩開かれる豪華なパーティの主役。
その会場では映画製作を夢見る青年マニー(ディエゴ・カルバ)と大スターを夢見る新人女優ネリー(マーゴット・ロビー)が出会う。

1920年代といえば「黄金時代」「狂騒の時代」「ジャズエイジ」等と呼ばれ、文明、文学、音楽、ファッション等、今日に受け継がれる様々なカルチャーが開花した時代。

映画界も同じく革命期に差し掛かっており、このムーブメントに乗り切れなかった人間にとっては厳しい試練の時でもあった。

時代の波とは恐ろしいもの。
人生の絶頂期から転げ落ちるってこういうことなのかな。
それは一瞬の出来事とかでなくて、別にしくじったわけでもなくて、なんとなくの違和感がジワジワ、でも確実に確信に変わっていくような感じなのかも。

相対性幸福論じゃないけど、人間の欲求はどんどん変化するし、段階を重ねるごとに難易度が高くなるのは事実。
絶対値を上げれば上げるほど維持が難しくなっていく。

富と名声、野心に彩られた映画業界で運命に翻弄される彼等を見ながら、そんなことを思った。

凡庸な人間から見ると、どんなに幸福レベルが上がろうとも、あんなにもキラキラした、かけがえのない「瞬間」に一度でも手が届いた人間を羨ましくは思う。

それは一方では不幸なのかもしれないけれど、少なくとも小さな夢や目標にかきたてられるワクワク感を知っている人間なら、何かしらの羨望は感じるんじゃないかな。

幸福は主観的な感覚であって、その痛みはどうしたって他人が判断することは出来ない。

あの出来事が、あの時代が、何事にも変えられない、もう二度と手に入らない瞬間だったことを知るのはいつも後のこと。

後半、ある映画の撮影でブラピが周囲を俯瞰して見てしまった感じわかるなあ。
きっとトップ俳優の時には気付かなかった景色。

それはある時代の終幕を見るようで悲しくもあるんだけど、これまでもこれからもこうやって文明は発展し、新たな価値観が生まれてくるのだと思う。

そして最後、監督が映画ファンに贈るビビッドで夢のようなラストシーン!

歴史という観点から見れば短い時代だったかもしれないけれど、彼等の影響力とロマンは永遠に色褪せないことを知るでしょう。

皆たしかにそこに存在していて、人々の感情を動かした。未来の映画へ多大なる影響と貢献を果たした。それが事実。

荒削り?詰め込みすぎ?
いや、ハリウッドへの愛に溢れた素敵な作品じゃないでしょうか。
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