たにたに

バビロンのたにたにのネタバレレビュー・内容・結末

バビロン(2021年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

【映画愛】2023年24本目

1920年〜1930年にかけてサイレント映画からトーキー映画へと転換していくハリウッドの映画業界を舞台としている。

サイレント映画のスターして君臨するジャック(ブラッド・ピット)。
若手女優として一躍スターダムへと駆け上がっていくネリー(マーゴッド・ロビー)。
映画プロデューサーとして成功を掴んでいく若き青年マニー(ディエゴ・ガルバ)。

サイレントからトーキーへと変わっていくなかで、彼らのキャリアが盛衰していく様を同時並行で描いていく映画愛に溢れた3時間の大作でした。

良いところを書き出そうにも絞り切れないぐらい個人的には好きな映画でした。
それは、"やっぱり自分は映画が好きなんだ"と気付かせてくれた、その大きな喜びと感動を味わえたことによります。

マニーの言う、"大きな作品の一部になりたい"という発言は、主役でなくても、目立たずとも、自分が人々の心を動かす一端を担っているという誇りこそ貴重なものなのだと捉えているものです。
かく言う私も映画制作の一端を目立たずとも担っている自負があって、それこそが生きる希望ともなっています。

サイレントのスターであるジャックと、転換期を乗り越えてトーキー映画初期の大女優として転身したネリーの関係性は、ミシェル・アザナヴィシウス監督の『アーティスト』を彷彿とさせます。しかし、それとは違うのがバビロンの着眼点であり、より下品に、より闇深く描いたことによって、ハリウッドの大胆さと、芸能界の異質感を俯瞰的に眺めることを可能にしています。

映画の魅力はまさにそれに尽きます。
異質なものに視聴者は魅了され、見たことないものを期待します。
ありふれた映画ではなく、常に進化を続ける映画界に期待します。
演者たちはまさに命を削ってそれに向き合い、未来へと受け継がれていく自分の存在証明を構築していくのです。

名作というのは残り続ける。
「イニシェリン島の精霊」の中でも、そのような話題がでましたね。
舞台というその一瞬のリアルな体験も魅了的ですが、映画と比べるものでもありません。記憶に残ることは共に共通しています。

ジャックはその存在価値を見事に構築していきました。作品終盤頃にはかなり疲弊した表情を見せ、自分の役目に終末を告げることになります。ブラッドピットの演技力が見事でした。

映画ラストの演出も、やられました。
時の流れを感じ、感傷的な思いになりますが、何故か分からないけど心を動かされる映画という文化をこれからも大切に体験したいと思わせてくれる映画でした。
たにたに

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