ウーピーブロンズバーグ

バビロンのウーピーブロンズバーグのネタバレレビュー・内容・結末

バビロン(2021年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

 序盤からゾウの穴からふんだんに糞を浴びる糞映画。
 1920年代のアメリカが舞台というだけでテンションが上がる。当時のパーティを知る由はないが恐らく現実はより過激であったのだろう。ブラピがジンを頼むシーンから禁酒法により密造酒が蔓延っていた背景が感じられた。
 序盤では軽く扱われていた死が、とある人物の死をきっかけにより重いものへと変化していく。そこからは物語が非常に長く重たくなり、前半の煌びやかさは一切感じられなくなっていく。3時間超という上映時間にも意味が込められているのだろう。
 トーキー化によりキャリアのピークを過ぎてしまったジャック、映画という大きなものの一部になり歴史を作った彼であったが、その歴史を紡ぐのはもう自分の役目ではないと認識する表情、そして最期を迎えることを決心し、実行するまでのシークエンスは作中屈指の美しさだ。
 メキシコに逃れ、ひょんなことでハリウッドに再び訪れたマニーが足を運んだ劇場には、老若男女様々な人たちが集まっていた。スクリーンに映し出されていたのは『雨に唄えば』(1952)、自分たちが命懸けで生きた時代をテーマにしたものだ。スクリーンを見つめるマニーの表情には、大きなものの一部になれたことへの喜びだけでなく、ジャックやネリーなどトーキーの波に乗ることが出来ずに命を落としたものへの思いもあったのだろう。この映画はそんな人たちへの救いをもたらしてくれる。
 E・Muybridgeの連続写真から映画が生まれて約100年。命をかけて映画に生きた彼らの先を、映画の未来は私たち鑑賞者は知っている。映画を作る者と見る者、その両者がいてはじめて映像文化が成り立つということを改めて認識させられた。その意味では、私たち鑑賞者も映画という大きなものの一部なのである。彼らが命懸けで紡いできた映画という歴史を絶やさない為に、これからも映画館で見ることをやめてはいけないと強く感じさせられた。