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バビロンのbluebeanのレビュー・感想・評価

バビロン(2021年製作の映画)
4.0
象と女性の汚いシーンから始まり、とんでもなく豪華絢爛かつ醜悪で汚いパーティーシーンの長回しが圧巻で、圧倒されました。マーゴット・ロビーが踊るシーン、混沌を維持しながら、彼女を演出するために群衆が絶妙に秩序立って動くところはすごかったです。その後もサイレント黄金時代のはちゃめちゃな撮影の様子が怒涛のような情報量で描かれます。後半はトーキーに移行して撮影の仕方が様変わりする様子をコミカルに、かつ哀愁漂う雰囲気で見せます。終始豪華な映画で、単純に楽しく、3時間飽きずに見終わることができました。

あるコンテンツの形式が黄金期を迎え、それがクリエーターともども衰退していく様子が切なく描かれています。トーキーへの時代の変化が背景となっていますが、次の時代を引き継ぐ側を描いた『雨に唄えば』を思い出しつつ、どちらかというと取り残される側の『サンセット大通り』に近いなと思いました。本作はオワコン化した役者のどうしようもない悲しさを見せつけつつも、作品の永遠性や、映画の歴史という大きな流れの一部になることの喜びも描かれており、意外にも少しは救いのある内容になっていてよかったです。映画以外のどんな仕事をしている人でも、自分がそういう立場になる日はいつか来るはずで、多くの観客にとって普遍性のあるテーマではないかと思いました。

本作ではトーキー時代の映画業界が醜悪ながら魅力的に描かれています。混沌としているけど活力があり、エキストラが怪我しようが事故死しようがおかまいなしです。人権無視で統制の取れていないめちゃくちゃの状況の中で、勢いと才能で押し通して、結果的に傑作を撮っていく流れがしびれます。怪我人だらけ、槍が飛び交い砂埃が舞う様子を背景に、泥酔したブラピが夕日の前で最高のシーンを撮影するところなんか、本当に最高でした。

それがトーキーの時代になると一変します。設備の整ったセットの中で、完璧に統制されたプロセスで映画を撮っていく様子が極端な対比になっています。それを見て、昨今のポリコレやリベラルといった流れを思わずにはいられませんでした。完全に正しく、綺麗で、安全で、配慮された世界にどんどん変わってきています。破天荒な振る舞いが、武勇伝などといって許されることのない時代、そいういった魅力を武器にする人はどんどん去っていきます。本作は一見、古き良き時代を懐古する映画に見えなくもないですが、終盤のギャングの要塞の地下の恐ろしいシーンがその印象を変えてくれました。
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