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バビロンのishikoroのレビュー・感想・評価

バビロン(2021年製作の映画)
3.4
技術革新が目覚ましい発展を遂げる現代で、私も新しいものを無意識に礼賛してしまっている節がある
この映画はまさに無声映画という古い形態で一時代を築き上げたスターが、有声映画という新しい技術の登場によって凋落していく様を見事に描いた作品である
命を切り詰めている演者やクリエイターなくしてエンターテイメントの世界は成立しないのにも関わらず、消費者はエンターテイメントを機械的に消費し、ただ新しいコンテンツに飛びついていく
かつてどんなに持て囃された者であっても、時代遅れの古臭いものはダサいとすぐに切り捨てられる
時代が一周回ればノスタルジーとかリバイバルとか聞こえの良い言葉で再評価を受けるが、制作側にはそんなことは関係ない
今金になるのか、ならないのかだけが重視される
技術革新は聞こえはいいが、そこには才能や努力では到底埋められない隙間が生じ得るのだ
『フェイブルマンズ』では映画を通して映画の発展を学んだが、こちらは映画を通じて映画の終焉を観たような気がする
過剰ともいえる描写は必要あるか疑問であったが、華やかな時代のあのグロテスクなまでに生々しい狂宴を伝えるためには必要だったのだろう
(これらの演出によって気軽に人にお勧めできる作品でなくなってしまったのは事実だが)
余談として、マーゴット・ロビーは一癖も二癖もある悪女を演じる上では天性の女優かもしれない
この映画を通じて、古くなってしまったものにもそれに真剣に向き合い従事してきた多くの人々がいるということを認識し、敬意を払い、作中のブラピのような人が一人でも減ることを願ってやまない(ただ、それすらも苦悩を与えてしまうような気もする)
ちなみに、一般より業界人受けが凄いらしい(中川家のテレビマンコントみたいだね)
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