三樹夫

バビロンの三樹夫のレビュー・感想・評価

バビロン(2021年製作の映画)
3.9
劇場で観た当時からここの部分思いっきり叩かれるだろうなと思っていたらその通りになっており、この映画は嫌いな人はもの凄く嫌いで死ぬほど酷評されるが、私は酷評に同意するが良いところもあったというスタンス。ただ悪い部分の悪さが半端じゃなく突出しており、悪いとかではなく最早気持ち悪すぎて無理となる。

良いところはブラピの演じてたキャラは良かった。サイレント時代のスターだが、トーキー時代に入ってどんどん落ちぶれていくのをブラピの哀愁漂う演技も相まって興味深く見れた。台詞回しが下手なんだけど、決定的だったのは観客に嘲笑された時で、台詞回しが下手とかよりも時代遅れになった。どれだけ台詞回しの練習をして上手くなろうがもうどうしようもないというので自分のスターの寿命が尽きたのが哀しく心に残る。台詞回しが下手で笑われる分には全然よくて、何故なら練習して上手くなる可能性や台詞回し下手でもいいように撮ってくれる監督に出会えたりするから。ただ時代遅れになってしまたのであればどうしようもない。スターである自分の寿命は完全に尽きた。時代遅れになったことをジャーナリストのおばちゃんから告げられる関係性も良かった。ブラピはあのおばちゃんを何だかんだ信頼というか認めており反発せず受け入れる。
後はサイレント時代の無茶苦茶な撮影や、映画スターが半端じゃない金を持っていて、公権力の目も届かず無法地帯だった時期のアゲアゲの酒池肉林っぷりは良かった。

悪かったところは、チャゼルが映画史を総括したのはこの人もの凄いナルシストなんだなと思って無理だった。ただ過去作観ててもナルシスト感は漂っているし、チャゼルの作品は一つのことを極めようと思ったら他のものは全部捨てて狂気に入り込むぐらいではならないというのが共通するが、そういうストイックなのに対する自己陶酔がある。そういう自己陶酔がこの映画では、俺が映画史を総括しちゃうよというナルシズムとして噴出し、どこから来るんんだその自信というので明確に拒否反応を覚える。自分がこの映画で映画史の総括をすることに対してブレーキとかかからなかったのかな。まあブレーキかからないからナルシズムなんだけど。自分が映画史を総括し得る人物と思える自己評価の高さとナルシズムが観てて凄いちゃ凄いなと思ったけど、素直にナルシスト過ぎて気持ち悪い。自動生成されたみんなの反応に「監督の自己満足ムービーが魅力的」とあるが、褒めてるのかそれ。
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