よしまる

バビロンのよしまるのレビュー・感想・評価

バビロン(2021年製作の映画)
3.9
最年少オスカー監督のチャゼル、以前からクラシックな映画(例えばトップハットとか)に心酔していたことを公言しているけれど、その集大成とも言うぺきノスタルジー満載の映画を自ら温めてきた脚本を持って生み出した。
よしまる2023年洋画ランキング第9位。

前作ファーストマンの時に、静かな映画の次は賑やかな映画、みたいなことも言っていて、だからといってここまで行けるかというほどの振り幅にまず驚いた。
冒頭の30分、豪華絢爛阿鼻叫喚な乱交パーティがとにかく凄い。
松ちゃんもこの時代に生まれたら良かったのになぁ(ファンの人すみません)。

衣装、セット、音楽、めくるめくシーンに飲み込まれる。監督が生まれる60年も前の世界なのになんでこんな感覚で捉えることができるのか感心しきり。
後で読んだところによると当時は剃毛の概念がなかったため、女優たちはわざわざ陰毛のカツラを付けているらしい。いや分からんて(笑)
あ、マーゴットロビーはボディダブルだそうですね。当初予定されていたエマストーンならそれはなかったかも?(ボクはエマ版を観たかったけど皆さんはどっちだろう)

映画がサイレントからトーキーへ移行する時代の物語。出てくる人物ほとんどにモデルがいるそうだけれど、残念ながらまったく分からない。
同じハリウッドの一時代を切り取った、本作と同じくブラピとマーゴットロビーが共演するタランティーノのワン・ハリのほうは、元ネタがわかって楽しめたところがあるので、知っていたらもっと面白かっただろうなぁと思う。

さりとて華々しいスターが落ちぶれていく様子はとても丹念に描かれ、やることなすこと裏目にでていく残念感、あるいは絶望感が味わえる。語り部となるディエゴカルバの演技もとても良く、今後注目の俳優さんであることは間違いないだろう。

ただやはり3時間越えは長い。ブラピのアレのあと、トランペット奏者の話とか、ギャングに追われるとか、もう少しコンパクトにまとめて結論に至っても良かったのではと思った。
描きたいことが多かったのか、ご予算が潤沢になったゆえなのか、結果として大赤字に終わってしまったのが、どことなくこの映画の持つ物悲しさと重なってしまう。

確かにこんなはっちゃけた世界はもう過去にしか存在しないし、なおかつそれを映像で呑気に楽しめる余裕すら無くなってきているのかもしれない。そう思うと切ないな。(てかそれが狙いなのか。)