酒を片手に西へ向かう

バビロンの酒を片手に西へ向かうのレビュー・感想・評価

バビロン(2021年製作の映画)
4.7
観てる時に、何を観てるんだろうと思って例えるなら何かなと考えたら、俗に言えばずっと映画の予告編を見てるような楽しさがある。
逆に言えば、大衆文化をことごとく表現するものとして、多少大げさであっても誇張した話がこの映画でたっぷり表現されてもそれがポップに大衆に感じ取れるなら今回は製作者の思うツボだと思う。
ある意味メタ的でもあり、叙情的でベタな脚本だと色々な方面で感じる人もいたかもしれない。
私が考えたのは、大衆文化としてのフィルムというのは、これも含めてある種の魔法が、悪く言えば呪いがかかってる瞬間がたびたび訪れる。
強烈に感じたのは、ベンヤミンかドリューキャスパーが語った、「10分の1秒のダイナマイト」という一説を念頭に置かれた映画なのかもしれないという観念。
我々の職場や駅の構内や、部屋や都市の街路、レストラン全てが我々を絶望的に閉じ込めているようにも思え、そこに映画がやって来て、牢獄の世界を10分の1秒のダイナマイトでぶっとばしちまった。この流れを今回は感じた。時代はサイレントから始まっているが、映画にさほど暗くない人なら「あれだー!」ってなるものも多いし、トーキーに移り変わる時代は確かに衝撃だった。その時代に我々は生きてないが、その牢獄もダイナマイトが爆破してしまう。この日本でもサイレントには弁士がいてトーキーには反対的な意見も多かった。

とにかくクライマックスにかけて、浮いた腰が10代の少女みたくぎっちり詰め寿司のコンクリートみたいに閉まるインパクトの映像を感じて欲しい。君の生肌で