sammy

バビロンのsammyのレビュー・感想・評価

バビロン(2021年製作の映画)
3.7
031/2024

「セッション」「ラ◦ラ◦ランド」のデイミアン◦チャゼル監督作品。

「チャゼルさんかい?早い!早いよ!」
このスケールの映画を撮るにはどうしても経験不足が否めない。あと10年後に撮ったら世紀に残る大傑作になったかもしれない。

スピーディーで緩急の激しい編集は今回も健在。
多用されている長回しで角度を変えて動くカットは見応え十分。
そうして描かれる映像は一言で言うなら「カオス」。
ハリウッドの華やかさを演出するためのパーティーの乱痴気騒ぎは煌びやかだが悪趣味で毒々しい。

サイレントからトーキーへ。
白黒からカラーへ。
1920年代、映画史における技術革新の転換期だった時代のハリウッドの栄枯と盛衰を残酷にコミカルに描く。

サイレント時代の大掛かりな撮影風景はとにかくパワフルで、例えばカメラ一台調達するのも命がけ、日没までに撮影を終えなくてはならないというような 熱い時代というのが印象的でした。

表現の幅が広がる傍ら時代と共にその陰で失われていった技術やノウハウもたくさんあったんだろうなと感慨深い。

タイトルの「BABYLON」が出るのが開始から結構経ってからなのだが あのタイミングがまさに時代が変わった瞬間だったということなのだろう。

サイレントの時には必要とされていなかった声の素質が伴わないジャック(ブラッド◦ピット)
アドリブが得意だったのに制約が増え過ぎて本領を発揮できないネリー(マーゴット◦ロビー)などその凋落は見ていて悲しいですね。

映画評論家エリノア(ジーン◦スマート)の
「あなたの時代は終わった」のセリフを黙って受け入れるジャックのシーンは特に胸にくるものがありました。

マーゴット◦ロビーって若い頃のポーリーナ◦ポリスコヴァに似てるな…。

再訪したLAの映画館のマヌエルの表情は
失われていく時代への悲哀と
フィルムに焼き付けられた変わらぬスターの姿に、歩んできた軌跡が間違いではなかったと
それでも映画の未来に希望はあるという示唆なのだと思いました。

エリノア「でも100年後 私たちが消えても 誰かがあなたの映画を映写機にかければ あなたは甦る」

三原色の撮りきり画面、黎明期のCG
そして水に溶かした絵具のカットは
デジタル技術がなかった頃のアナログな撮影◦編集を表現しているのでしょうか。
リュミエール、メリエスから始まり最新作の「AVATAR」まで
100年にわたる映画史を回顧するラストは震えました。

映画が好きで本当に良かった。
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