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デビルズ・ソナタのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

デビルズ・ソナタ(2018年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

将来を嘱望される若き天才女性バイオリニスト・ローズのもとに幼い頃に生き別れた父の訃報が届く。彼女の父はかつて一世を風靡しながら突然姿を消した著名な作曲家マーロウだと分かり、ローズは遺産を整理するためにフランスの田舎町にひっそりと残された古めかしい屋敷を訪れるが…。

変死を遂げた作曲家が娘に遺した楽譜。
そこにはある秘密が隠されていた…が、それはタイトルで分かってしまう。(笑)
全く怖くはないのだが、古風な雰囲気があり、謎解き要素が面白いゴシック・ホラーの佳作である。

父の残した屋敷には父が死ぬ間際に作曲していた「バイオリンソナタ作品54」と題した楽譜が残されていた。
ところが楽譜には4つの謎のシンボルが記されており、ローズは屋敷の中で「何か」の存在を感じるようになる。
ローズはマネージャーのチャールズと共に楽譜の謎を解き明かしていく。

屋敷に留まるローズは父親がどのような人間だったのかを知りたいだけなのだが、チャールズはマーロウの残した楽譜が金になると解読に執着する。
ローズは身の危険を感じたのだから逃げ出せば良いのだが、「今まで世話したのだから付き合え」というチャールズに恩義のあるため仕方なく協力するという流れだ。

チャールズはソナタのさわりを聞いただけでおかしくなるのだが、それを曲の魅力だと考える。
チャールズはマーロウの同輩だったヴィクトルを訪ね、楽譜のシンボルの意味を問う。
4つのシンボルは組み合わせると闇の騎士団の紋章となる。
彼らは音楽に魔力があると信じていた。
楽譜に記された戦慄を一音違えず正しいピッチで弾けば悪魔を呼ぶことができるということを知る。

楽譜をただ演奏しても、何も起こらない。
楽譜に記されたシンボルは「権力・不死・出現・双対性」を意味する4つだが、屋敷のあちこちにシンボルが隠されている。
そして、その出現に楽譜を奏でるための条件が隠されている。
不謹慎だが、まるで宝の地図を解読していくようなワクワク感があるのだ。

真夜中にけたたましく鳴る時計にシンボルが。
なるほど12時に演奏するのか?
暖炉の火が強くなるとシンボルが。
なるほど炙り出すと隠された音符が。
鏡の裏にシンボルが。
なるほど鏡に映すように逆に弾くのか?
マーロウの肖像画の薔薇に描かれていた騎士団の紋章が。
なるほどローズが弾かなくては成立しないのか…と次々と謎が解けるのが面白い。

マーロウが住んでいたのは秘密結社のリーダーの屋敷で、悪魔召喚の書物も、森の教会も秘密結社が所有していたものらしい。
ローズは教会の地下に拷問部屋を発見する。
壁画では子供が捧げられ、書物に5人の子供が悪魔の生贄になっている絵が。
「悪魔は純粋なる者の唇を通して語りかける」という記述をもとにマーロウは4人の子どもを拷問して殺し、その声をカセットに吹き込んでいた。
父親の悪業に愕然とするローズ。
4人の子どもは第1~4楽章のためであり、ローズこそ最終楽章のための生贄だったのだ。
遂に条件が揃い、クライマックスでローズがソナタをチャールズに無理矢理演奏させられる。
4人の子供の声が音楽に合わせて謎の言葉を発すると、現れた悪魔が聴いたチャールズの魂を喰らう…。

後日、ローズが例のソナタを発表する公演が行われる。
ヒントをくれたマーロウの同輩ヴィクトルは「友人ではない」と言っていたが、召喚へと導き、ローズの公演を聴きに来たことからも秘密結社の一員だろう。
胸にさした薔薇はローズへの敬愛ではなく、秘密結社の証だ。
映画はローズがソナタを弾く寸前で終わるが、会場に居た人間は悪魔の生贄になるか、虜になるだろうバッドエンドである。

謎解きが面白く、テンポも良い。
残念だったのが、悪魔のCGと音楽。
形をハッキリさせずに眼だけ光らせておけば、得体が知れないからこその恐怖感が掻き立てるのだが。
雰囲気は出ているが、さすがに悪魔を召喚するほどの音楽の具体化は難しい。

ローズ役の若い女優フレイヤ・ティングリーははっきりした顔立ちで眼の演技が良い。
それを支えるべく、ベテランが脇を締めており、話に説得力を持たせている。
チャールズには「007/カジノロワイヤル」のシモン・アブカリアン。
ヴィクトルに「ブリジット・ジョーンズの日記」シリーズのジェームズ・フォークナー。
そしてマーロウには「ブレードランナー」のルトガー・ハウアーと個性的な役者が揃う。

「ダヴィンチ・コード」のような作品に刻まれた謎と、作品には魂が宿るという古風な精神性をホラーに活かしたアイデアが面白い。
予算と演出次第では、70年代のオカルトホラーのような作品に化けたかもしれない。
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