zhenli13

追跡のzhenli13のレビュー・感想・評価

追跡(1947年製作の映画)
4.4
なんと濃密な物語!訳のわからなさが後味として残る。明らかに正統派ヒーローにはなり得ないロバート・ミッチャムを主役にしたのは正解だし、彼の本気なんだかやる気あるのかわからない寝惚けまなこが意図された演出なのかもわからない面白さをも倍加していて「やっぱりいいよねロバート・ミッチャム」となる。
本作の前に観た『暗黒の命令』同様、母の力(倫理を超えた力)がデウスエクス・マキナのごとく急速に結末を決定づける。主役の恋愛はあくまで添え物。なんといってもその母が『レベッカ』のダンヴァース夫人役で知られるジュディス・アンダーソンなので迫力がある。

全編ミッチャムの回想で構成される。夜の表現、アメリカの夜も暗闇と照明の塩梅も、とてもよかった。その闇の深さでしばしば『狩人の夜』と空目。序盤のジュディス・アンダーソンもリリアン・ギッシュのような振る舞い。
作中流れるオルゴールの「ロンドンデリーの歌」がさまざまに変奏される劇伴もよかった。結婚行進曲も悲しげな短調で変奏される。

矛盾を力技で正当性に押し込めるハリウッドヘイズコード下の枠に収まっているようではみ出しまくってる点でも、ノワールともいえるしプレコード的ともいえるかも。
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