かたゆき

ブロークン・フラワーズのかたゆきのレビュー・感想・評価

ブロークン・フラワーズ(2005年製作の映画)
3.0
かつて様々な女性たちと浮名を流し、名うてのプレイボーイとして名を馳せたドン・ジョンストン。
そんな彼も寄る年波には勝てず、同棲していた女性にも振られ、いまや自由気儘な独り身として空しい毎日を過ごしている。
そんなジョンの元にある日、ピンクの封筒に入った差出人不明の手紙が届くのだった。
「あれから20年経った今、あなたに伝えておきたいことがあるの。あなたと別れてから私は妊娠に気付いた。あなたには知らせず、私はその子を産んだわ。そして一人で育ててきた。そう、あなたには今年20歳になる息子が居るのよ」――。
当然、寝耳に水のドンは、にわかにはとても信じられなかった。
真相を確かめるため、ドンは20年前に付き合っていた心当たりのある女性たちを今さらながら訪ねて回ることに。
小綺麗なスーツに身を包み、ゆく先々でレンタカーを調達し、彼は当時付き合っていた5人の女性たちの元へと旅立つのだった。
その手に毎回ピンクの花束を握りしめて…。
インディペンデント映画界の巨匠ジム・ジャームッシュ監督のカンヌ映画祭グランプリ受賞作。

いかにもジャームッシュらしい、このトホホな親父のゆる~い一人旅を描いた本作、なかなか味わい深いロードムービーの佳品に仕上がっていましたね。
20年前に付き合っていた元カノたち4人(5人のうち1人は亡くなっている)に、自分の息子を勝手に産んでいないか確かめるために旅に出るというこの設定がまず秀逸。
男って、何年経ってもかつての恋人たちには自分を愛したことを今でも覚えていてほしい(最高の思い出として)と思うバカな生き物なんで、「あぁなんか分かるわ~」と苦笑交じりに共感しちゃいました。
そして相手の元カノたちもそれぞれ四者四様の人生を歩んできたことがしみじみと分かるなかなか個性豊かな面々で、なんだか凄く良かったです。
最初の酒に酔ってすぐに身体を許しちゃう軽ーいノリの元カノ(その娘もね!)から、見栄っ張りな経営者、スピリチュアルにいっちゃったアニマル・セラピスト、そして現在とても幸せとは言えない境遇に居る元カノまで、なんだか人生の哀歓を感じさせてじんわりと切なさがこみ上げてきますね。
これぞ、ジム・ジャームッシュ節!

ただ、惜しむらくは肝心のことの真相。
きっと、敢えて真相を謎のままにして終わらせたんだと思うんですけど、さすがにここまで引っ張といてこれはないですわ~。
手紙の送り主や息子の真偽など、もっとすっきりとさせて終わって欲しかったです。
それまではすこぶる良かっただけに、ラストだけがなんとも惜しい。

以下、どうでもいい余談。
昔、付き合っていた彼女とのピロートークで「もしこの先、わたしたちが別れることになったとしても定期的に2人で会うようにしような」と言われました。
でも、いざ別れてみると相手から全く連絡なし!!
思わず、「どういうこっちゃねん!」と電話しようかと思いました(笑)。
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