アラサーちゃん

ブロークン・フラワーズのアラサーちゃんのレビュー・感想・評価

ブロークン・フラワーズ(2005年製作の映画)
3.0
金はあるが冴えない中年男ドン・ジョンストン。若いガールフレンドに振られて落ち込んでいたところに、一通の手紙が舞い込んだ。手紙の主は昔の恋人らしく、息子が自分に会うため旅に出たと言う。それを聞きつけた友人は、ドンの20年前のガールフレンド5人を探し出し、会いに行くようドンを唆す。2005年、米。

冴えない中年男を演じたら右に出る者はいません、ビル・マーレイ。
画像をピンクの花束抱えたのにしようかと思ったんだけど、やっぱりジャージ姿が似合うのでこれに。

ジム・ジャームッシュのクスッと笑えるロードムービー。カラーなのがなんだか違和感。
熱さとかやる気とかそういうものが一切感じられない主人公ドン。初っ端から振られますが、ショックなんだろうけどそれがあんまり顔に出ない。表情に起伏がない。なんだろう…缶コーヒーのCMのT・L・ジョーンズみたいな(←宇宙人か)
そんなおっさんが、ひと昔はドン・ファンよろしく星の数ほどガールフレンドがいたプレイボーイ、コンピュータ・ビジネスで財を築いたというからにわかに信じがたい設定。なんか無欲の塊のようなおっさんなのに。

会いに行く元恋人は4人。
これがシャロン・ストーン、ジェシカ・ラング、ティルダ・スウィントンと豪華で美人なメンツなので、この冴えないおっさんもなかなかいい男だったんだと伺える。
彼女らのもとを、ビル・マーレイが愛車に乗ってピンクの花束を抱え、訪ねて行く。

ひとりめはシャロン・ストーン。未亡人で、中年になってもセクシーな彼女と年頃の娘は、突如やってきた彼に終始ウェルカム。ドンも表情は変わらないけれど、心の中では鼻の下が伸びてるに違いない。

ふたりめは知らない人だったけど、これが私の中でイチオシ。お金持ちで愛妻家の旦那と二人暮らしの彼女は、突然の訪問に戸惑う。この三人でのディナーシーンがこの映画でいちばん笑える。

三人目はジェシカ・ラング。それなりの歳なのに、それを感じない美しさ!でもセクシーさは封印して、仕事で成功したかっこいい女性でした。彼女はもう、ドンには少しもなびかない。持っていった花束も、自然な理由で秘書から突き返されてしまう。でも、四人の中でこの関係性がすごく素敵だなと感じました。

四人目はティルダ・スウィントン。彼女の旦那も家もなかなかファンク。今のベリーショートの彼女に見慣れたら、なんだか不思議な感じの黒髪ロングウェービー。ここではドンは完全にシャットダウンされ、旦那にもボコボコにされてしまう。

そして行き着く、五人目の彼女の墓。
空港、そして行きつけのカフェで出会うヒッチハイカーらしき青年。
最初は友人に無理やり勧められ、期待もせず嫌々始めた手紙の主探し。心境の変化、何も生きがいを見いだせなくなったドンがこの出来事の中で見つけたものっていったいなんだったのか。

それを教えてくれるラストは、、、まあ、、、
ジム・ジャームッシュの映画と思うともっとシャレオツなラストを期待もするが、冴えないおっさんが主軸の映画、こんなラストも悪くもない。と思う。