ジェイコブ

ステップのジェイコブのレビュー・感想・評価

ステップ(2020年製作の映画)
3.9
結婚3年目にして妻を病気で亡くし、2歳半になる娘美紀を一人で育てる事になった健一。右も左も分からない中、様々な人の手を借りながら子育てに奮闘していく。美紀が小学生になり、健一が子育てにも慣れ始めた頃、学校で母親の絵を描き、思い出を語る授業が行われる事に……。
荒川アンダーザブリッジの飯塚健監督・脚本作品。山田孝之演じるシングルファーザーの健一と、娘の美紀が小学校を卒業するまでの10年に起きた人生や生活の変化を描いている。
山田孝之といえば、福田雄一作品におけるコミカルな役どころと、全裸監督のイメージばかりが根付いていたが、本作のような娘を思うシングルファーザーの役も一切違和感なくできていた。山田孝之だけでなく、義父の國村隼や、義兄役の東京03の角田など、脇役の名演も光る非常に良質なドラマであった。
ステップというのは血の繋がりのないという意味と、ステップアップしていくという2つの意味があるだろう。運動会の練習としてバトンの受け渡しを父娘二人でやっていたシーンが印象的であり、バトンこそが、本作におけるキーとなる小道具だろう。バトンは思いや優しさの象徴であり、親から子へ、子から親へと繋げ、最終的に受け取った人も優しくなれる物として描かれている。それは美紀だけでなく、子育てをした健一も同じであり、伊藤沙莉演じる保育士から、川栄李奈演じる役者の卵、そして広末涼子演じる再婚相手の奈々と、二人が受けた優しさはバトンのように人から人へと繋がり、受け渡されていく。
悪い人間の出てこない、とても優しい世界の作品であるため、見た人の心も優しい気持ちにさせてくれる。