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EMMA エマのNMのネタバレレビュー・内容・結末

EMMA エマ(2020年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

舞台こそ違うが、現代の一般人と何ら変わらない日々の小さないざこざや悩み、成長が綴られていく。身近でリアリティがあるし、子どもなエマがぐんぐん成長していく様子に感動する。
ジェイン・オースティンによる古来から大人気の名作で、何度も映像化されてきた作品。
本作はエマが他の作品より結構ツンツンしている特徴。アニャ・テイラーにぴったりの演出。
また誰が誰でどういう人物なのかわかりやすいよう工夫されていて見やすい。
コメディタッチではあるが、誰でも共感できるような失敗や挫折が起きて胸が傷んだりもする。

19世紀、小さな村。
ウッドハウス家のエマ嬢は頭の良い女性。
相続人であることもあり、恋愛や結婚をして男性に支えてもらおうという気持ちがない。
幼くして母を亡くし、姉イザベラも嫁いで出ていった今、父はエマだけはいなくならないでほしいと望んでいる。エマもそのつもり。
この神経質で心配性な父はいつでもユニークな存在。

長年働いていた家庭教師アナがウェストンに嫁いでいく。
ウェストン氏をアナに紹介したのはエマなので、エマは自分が恋のキューピッドなのだと誇る。

父も、家族同然の幼なじみジョージ・ナイトリーも、ことあるごとにエマをたしなめるが、自分に自信がありすぎるエマは聞く耳を持たない。
ナイトリーは友人でありながらいつでも客観的に正しいことを言ってくれる。ジョージの弟とエマの姉が結婚したので、今は親族でもある。

村の寄宿舎で生活する女学生のハリエットはエマを盲信する友人。だがエマの次なる標的でもある。
マーティンという小作人の青年がハリエットに求婚するが、エマは彼を全否定。ハリエットはエマの言う通り断ってしまう。
エマは牧師のエルトンをハリエットとくっつけようと模索。
しかしエルトン牧師はどう見てもエマに夢中。エマはそれを無視していると思いきや全く気づいていないだけ。
この辺からエマのぼろが露見してくる。
やがてエルトン牧師からアプローチを受けたエマはやっと自分の勘違いに気付き落ち込む。
ハリエットは責めることなく変わらずエマを慕ってくれた。

さらに、村を出て暮らしていた同世代の女性ジェインが帰郷してくる。
彼女の叔母ミス・ベイツにずっと自慢されてきたエマはうんざりしていたが、初めて会ってみると意外と洗練されていて自分への自信が揺らぐ。

そこへ商人チャーチル家のフランク青年も突然帰郷。ハンサムで、チャーチル家の相続候補。
ミス・ベイツはジェインとフランクを意味ありげに会わせたがっていた。
チャーチルはフランクをエマと結婚させたい。
チャーチルがエマにフランクを紹介、散歩に出かけ仲の良さそうな様子を村の人々に見せつける。

舞踏会でエマはナイトリーと踊ることになると、男女としてお互いを意識した様子。だが進展はない。

ここまでのメンバーでピクニックに出かけたエマたち。
ミス・ベイツは冗談として「退屈な話なら得意よ」と話すと、エマはつい同意してしまい空気が凍りつく。
ミス・ベイツがジェインの自慢ばかりしてきたのは実質一人娘であり、実の子ではなく亡くなった妹の娘だから尚更大事だったが、経済上の理由でなくなくよその家に預けた経緯があるから。
しかもその姪の目の前で恥をかかせてしまった。
事情を知っているみんなはさすがにエマのもとを去る。

誰しも至らない部分はあるがお互い様だからそれを指摘しないで生きている。エマは子どもだった。

これまでエマの視点から物事を見ていた私たちはここで、エマと同じようにミス・ベイツやエルトン夫妻やジェインたちを馬鹿にしていたことに気付くはず。エマの自己嫌悪の様子は痛いほど共感を誘う。自分ばかりが我慢し寛大に接してあげていたと思ってはいなかったか。
自分は有能だと思い込むのは自信のなさの裏返しではなかったか。

ナイトリーも大声で咎めた。一人泣きながら家路につくエマ。
自分の未熟さに打ちひしがれる。私は頭が良く洗礼された女性のはずだったのに。
これまで不遜ではあったが、すぐに反省できたのはエマの良かった点とも言える。
日を改めて詫びに行くと、ミス・ベイツは咎めずこれまでの親切に感謝すらしてくれた。

ナイトリーとも喧嘩状態だったが、エマは謝罪に行ったと知り、ナイトリーも言い過ぎたことを気にしている様子。
しかし二人ともどうしても素直にならない。

チャーチル家に赴くと、フランクはジェインと密かに婚約していたことが分かったと知らされる。エマと一緒にいたのはそれを隠すためのフェイクでもあったのだろう。フランクは既に村を去っていた。

ハリエットはフランクに暴漢から助けてもらい再び恋をしていた。エマは橋渡しをするつもりだったが、またできなくなってしまった。そう思い込んでいたエマがハリエットにまたも詫びると、ハリエットが恋しているのはいつでも親切にしてくれたナイトリーであることをやっと知る。
またしても勘違い。

エマは咄嗟に、ナイトリーはあなたを心配しただけではと思ったことをそのまま言ってしまい、ハリエットはついにエマのもとを去る。
またしても失敗してしまい涙を落とすエマ。今度は大事な親友を失うかもしれない。

ナイトリーがフランクの件を聞いて駆けつけ、エマに本心を告白する。
事ここに至っても何がどうなっているのかなかなか整理できない様子のエマ。告白はなし崩しになり苦々しく帰っていくナイトリー。

とにかくハリエットにマーティンからの求婚を断らせたことが間違いの始まり。エマはマーティンに会いに行き土産と謝罪の手紙を渡しにいく。

再びプロポーズされそれを受けたことを報告にハリエットがやってくる。今度は自分で決めたようだ。
さらに、ハリエットは自分は一般の家庭だと告白する。エマに捨てられると思い隠してきたのだろう。
エマは今度はそれを受け入れ、仲直りに至った。今度こそ本当の友達になれそう。

さて、今度こそエマとナイトリーの番。もう心は決まっている二人。
結婚式では、ハリエット夫妻もミスベイツもチャーチル家もエルトン牧師も祝福。
小さな、だがとてもあたたかい村の物語。

自分にエマのようなところがないか、あるならエマのように過ちを認めて正解を探し直す作業が必要なのでは、と考えさせられる作品。

エマに傷付けられた女性たちが、反撃したりせず黙ってそこを去るのが印象的。感情を荒げないのが上品。咄嗟に言い返したりすると悪化させるのでこれが正解なのだろう。
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