荒野の狼

EMMA エマの荒野の狼のレビュー・感想・評価

EMMA エマ(2020年製作の映画)
1.0
世の中見渡せば、「お金しか持っていない金持ち」ばかりになってしまっていて、「さすが金持ちは違う」、と貧乏人を唸らせる様な金持ちがいなくなってしまった。育ちの良さ、血統、年季、資質、貫禄の伴わぬ今時の富裕層というのは、言ってみれば張子の虎である。貴族というものがいなくなれば映画だって、もはや貴族を描くことはできないのだなあ、とつくづく思わされた映画であった。かつての貴族ものの作品には、ヴィスコンティーとまでは言わぬまでも紛(まが)い物にしろ、それなりの風格があったものだが、そもそも出て来る俳優全てに、雰囲気にすら「それ」が無い。抜きん出てアニャが酷い、口元と歯に品がない、気品のない女優にこんな役をやらせてはダメである。「メッキが剥がれる」のと「没落」とは全然違う。成金には、だからデカダンスやバロックは無縁である。映画を撮ろうと思うのなら、せめて「絵画」と「イラスト」の違いくらいはわかっていなければいけない。
荒野の狼

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