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EMMA エマのkuuのレビュー・感想・評価

EMMA エマ(2020年製作の映画)
3.7
『EMMA エマ』
原題 Emma.
製作年 2020年。上映時間 124分。
イギリスの女性作家ジェーン・オースティンによる名作恋愛小説で、これまでにも何度も映像化されている『エマ』を、Netflixオリジナルドラマ。
『クイーンズ・ギャンビット』のアニヤ・テイラー=ジョイの主演で新たに映画化。

容姿端麗で利発、裕福な暮らしを送るエマ・ウッドハウスは、女王様気取りで周囲の人びとの恋の仲介を楽しんでいた。
しかし、いくつかの失敗を経て自らを見つめ直した彼女はやがて、ずっと身近にあった愛に気づく。

アメリカのテレビドラマ『ブリジャートン家』シリーズでこの時代のヨーロッパのヴィジュアルには幾分か馴れてはきたが、隠れ肉食系女子たちはどうも面食らう。
必ずある主人公の傲慢チキチキと偏見アリアリ。
ジェーン・オースティンのお馴染みパターンとも云えるかな。
今作品の原作は『高慢と偏見』と共に読んでますが、オースティン自身とファン以外には、あまり好まれないヒロインを登場させるのも彼女の常。
エマはボッチャン(甘やかされ過ぎ)やし、かなりの強情。
加えること、独りよがりで、自分の縁結びの能力を過大評価し、他人の人生に干渉することの危険性を見抜けないボッチャン。
その想像力と認識力はしばしば彼女自身と回りをを迷わせ、さらに彼女はひどい俗物とも云える。
今作品の原作は、ジェーン・オースティンが生前に出版し、完成させた最後の小説であると考えると、多少感慨深い。
(彼女の最後とされてる小説『説得』は、1817年の死後に出版されてる。)
41歳の若さで亡くなったオースティンは計6作品には、彼女の経験が小説に多大に反映されている。
彼女が経験したことや、見聞きしたことを材料として描きたかったのは、当時のありのままの暮らしぶりや人々の関心事、特に女性たちの日常生活だったのは、今作品を見ると垣間見れるし、歴史好きの興味を掻き立てる。
こういった対象を描かせれば、彼女ほどユーモラスに情景を映し出せる作家はそういないんじゃないかな。
高慢傲慢チキチキバンバンのエマでさえ、時には可愛くて手を差し伸べたくなる男心を巧く揺さぶる。
また、結婚とゼニ(お金)を主題に、当時の結婚観を皮肉たっぷりに描いているとこもバロックのような風を感じる。
まるで歪な真珠。
オースティンがバロック芸術を愛してたのも頷けるかな。
この2020年の映画版『エマ』では、エマ・ウッドハウス役をアニヤ・テイラー=ジョイが演じてる。
オースティンが描く女子そのものを演じきってるし巧い。
(こないな女子役をするのをアニヤ・テイラー=ジョイは渋ったそう)
友人のハリエット・スミス役を、ミア・ゴスが好演している(VOGUEのモードに花咲く姿は消して控えめ)。
今作品の印象的なのはミス・ベイツ役のミランダ・ハート。
彼女は、現代にもいそうなチョイとウザいが、憎めない人物をユーモアと色彩そえ演じてた。
また、女性中心の物語に登場する男性キャラで云えば、エキセントリックかつユーモラスに自己を主張するエマの親父を演じるビル・ナイ。
そして、エマの欠点をズバリと指摘するジョージ・ナイトリー。
たしか、小説やとこちらが主人公やった。
キャラ自体はエエけど、ジョニー・フリンがどうも肌に合わなかった。
後の野郎どもは軽薄そのものでフランク・チャーチル役のカラム・ターナーも、魅力的だが欺瞞に満ちた役柄で、物足りなさを感じた。
おそらくこれは、有名な男性スターが印象的な女性から脚光を浴びるのを避けようとする、もう一人の印象的な女性監督、オータム・デ・ワイルドの意図だったんかは勝手な想像やけど。
ジェーン・オースティンの世界、華やかさやお洒落、そしてジョージア王朝時代の厳しいマナーや俗物根性とか、失われた過去の時代が好きなら、きっと『エマ』を気に入るんじゃないかな。
また、イギリスの美しい風景に映える、印象的な色使いの衣裳、お屋敷の調度品、すべてがアート感満載やし、内容はともかく目の保養にはなりました。
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