せいか

EMMA エマのせいかのレビュー・感想・評価

EMMA エマ(2020年製作の映画)
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11/19、Amazon videoで動画レンタルし、字幕版を視聴。
1996年版を観たときもしみじみ思ったが、原作小説を読むことをおすすめする。あと、主演が1996年版のほうがまだエマっぽい。こちらはどちらかというとハリエット向きの雰囲気を持ってる人だと思う。

本作は全体的にコミカルにまとめているので見やすくはあるけれど、1996年版もそうだったのだが、エマが持つ悪いところをとにかく誇張してるところがある(分かりやすくしているとも言えるのだけれども)。ただ、お父さんの雰囲気はだいぶいい。ナイトリーはやけにオスみが強く、冷静沈着で賢い男という感じは薄らいでいた。
本作は、エマとナイトリーがいよいよ男女として距離を詰めていくところをやはりわかりやすーく描いてる感じ。
とにかく本作、分かりやすくまとめたり補ったりしてエマとナイトリーの恋物語として作っているので、繰り返すが、まあ見やすくはある。

また、原作ではとことん無視され透明化されていた物言わぬ召使いたちを画面の随所に出すことで、主人公たちがその立場として多くの者を傅かせケアさせていることを表していたのは、今回の映像化で良かった点かもしれない。映像にしない限りは存在が出せない人たちなので。
この点でまたエマがどれだけ自分の恵まれた境遇に甘えきった上で一見進歩的なことにしろわがままにしろを言っているのかが露骨に分かりやすくなっていると思う。私、結婚したくないのよという、あくまで自分の恵まれた立場だからこそ言えるものも本作ではとことんそうした彼女の鈍さや傲慢さが分かりやすく表出していはいた。ただとことん、彼女の持つ賢さや、鈍さが根にあるとはいえ一種のフェミニズムを連想させる自立心みたいなのはだいぶ引き剥がされてしまっていたのが残念である。確かに彼女は傲慢でプライドが高くて周囲も自分も見えていないところはあるのだけれど、それでも理知的なものは感じさせるところはある女性だったのが、凡庸に落とされまくっているというか。他のキャラクターもそうだけれど、鋭さがだいぶ丸くされてしまっているので、なんか全体的にほわわーんとしている。
冒頭の、人生のあらゆる苦難を感じることなく生きてこられたっていうのが端的に彼女を捉えたすべてでもあるのだけれど(羨ましいものである)、その後に長々と語られていくことになる彼女の魅力が半減しているというか。

そしてもちろん始終常識人の立場にいるようなナイトリーだってそういう滑稽さは持っていて、召使いたちを通してそこは表現していたのは良かったかもしれない。こういう皮肉な眼差しに関しては好感が持てた。
ただナイトリーもなんかずっとわかりやすいキャラクターにされてしまっていて、なんかこう、原作がおすすめですみたいな気持ちになる映画だった。くっつくあたりとかも浮足立ちまくりというか。

なんかずっとこれじゃないみたいなビミョーな薄膜越しに視聴することになった。繰り返すけども、分かりやすくまとめてはいる。1996年版みたいになんかすごいぶっ飛ばされてる感じもだいぶ軽減されてもいるので、どちらかを観るというならこっちのほうがオススメでもある。
最悪の場合、見た目だけの作品かとまで覚悟してたので、それを思えばだいぶ楽しめるものにはなっていたとも思う。ただ、いかんとも言い難い。
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