Jeffrey

アリアのJeffreyのレビュー・感想・評価

アリア(1987年製作の映画)
2.0
「アリア」

冒頭、10のオペラの物語が幕を開ける。教会、トレーニングジム、裸体の女、死の逃避行、ネオン街、クラブ、ビデオテープ、道化師、カジノ。今、仮面舞踏会から様々な監督による話が始まる…本作はニコラス・ローグ、チャールズ・スターリッジ、ジャン=リュック・ゴダール、ジュリアン・テンプル、ブルース・ベレスフォード、ロバート・アルトマン、フランク・ロッダム、ケン・ラッセル、デレク・ジャーマン、ビル・ブライデン10人によるオムニバス映画で、1987年に製作された英国映画がようやく国内初円盤化され、BDを購入して初鑑賞したが面白い。今作はカンヌ国際映画祭に正式出品され、8人の作曲家の10のオペラ・アリアを題材にした作風だが、それぞれ前衛的な作風に仕上がり、本来の趣旨とは少しばかりズレた作品になっている。

まず、 構成は計10タイトルで、まずはローグ作品の「仮面舞踏会」から始まる。本作ではヴェルディやリュリ、ワーグナー、プッチーニ、レオンカヴァッロ等の楽曲が使用されている。入り乱れる監督の人種により、言葉も様々である。かつて、存在していた松竹富士が配給していたため、長らくディスク化が難しかったのかもしれないが、遂に紀伊国屋書店から発売された。個人的に松竹富士が配給した作品を結構好きなのが多くあった。名作も勢ぞろいだった。キング原作の「クジョー」や「 シン・レッド・ライン」など。確か「戦場のメリークリスマス」もそうだったかな…。

ニコラス・ローグ 「仮面舞踏会」ヴェルディ。本作品はヴェルディ中期を代表する3大傑作の1つとされ、原作はスクリーブの"グスタフ三世または仮面舞踏会"で、1792年スウェーデン君主グスタフ三世が仮面舞踏会の場で暗殺された事件を題材にしているようだ。この作品でゾグ王を演じたのは監督の奥さんらしい。次に流れるのがチャールズ・スターリッジの「運命の力」で、これは3人の子供がメルセデスを盗み、暴走しながら事故に至るまでの美しさをモノクロで強調した作品。どうやら主要な人物が皆、死を遂げる復讐劇らしく、ベルリンを舞台にしているようだ。

次に流れるのがゴダールの「アルミーノとルノー」で、リュリの作曲を映像化したもの。フランスバロック音楽の作曲家である彼のフランスオペラを確立したもので、出身はイタリアだが、1661年フランス国籍を取得し、ルイ14世の貴族社会に地位を築いているようだ。続いて、「リゴレット」でジュリアン・テンプル監督が作曲ジュゼッペ・ヴェルディの作曲を映像化したものになる。これはリゴレットは愛する娘が公爵から辱めを受けると復讐のため、公爵の殺害を企てるが、公爵を愛する娘は身代わりになって死んでしまうと言う話だ。テンプル監督と言えば様々な音楽ミュージックのPVを撮っている人で有名になっている。

次がブルース・べレスフォード監督の「死の都」で、エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルトの作曲を映像化したものになる。本作は19世紀末のブリュージュを舞台に、亡き妻への思いから、妻と瓜二つの女性に心を奪われるが、妻とは性格の異なるその女性をついには殺してしまうという物語で、ドイツ人作曲家コルンゴルトは若くしてオペラで成功するが、ナチス台頭によりユダヤ人だった彼の作品はすべて上映禁止となる過去を持っているようだ。その後に米国へと亡命している。次の物語がロバート・アルトマン監督による作曲ジャン=フィリップ・ラモーの「アバリス」で、ラモー最後のオペラで、女王アルフィーズが風の神ボレアスの命に逆らい、2人の北風の神の王子ではなく、異郷の男性アバリスを愛したことで起こる騒動を描いている。

次がフランク・ロッダム監督による「愛の死」で、リヒャルト・ワーグナーの楽曲を映像化したものになる。中世の王妃とされたイゾルデと愛し合うトリスタンが、禁断の恋の果てに死に至ると言う悲劇を描いたもので、ワーグナーは19世紀を代表するドイツ人作曲家でヒトラーが愛した人でもある。次が、ケン・ラッセル監督によるも「誰も寝てはならぬ」で、ジャコモ・プッチーニの楽曲を映像化したものになり、ペルシャ周辺に伝わる物語で、それを18世紀のフランス人作家が発表して、ベネチアの劇作家が戯曲化したものになる。中国、北京を舞台にトゥーランドット姫に恋した王子からカラフが試練の3つの謎を解き、愛を成就させると言う話だ。

次がデレク・ジャーマン監督による「ルイーズ」で、ギュスターヴ・シャルパンティエの作曲を映像化したものになる。詩人の恋人をめぐって両親と喧嘩したヒロインが家を出ていくそしてパリの民衆を描き、自然主義文学の影響が色濃く反映されたオペラとなっている。ジャーマンは個人的には非常に苦手な作風ばかり撮る監督で、94年にエイズにより死去するまで様々な作品をとっているが、特に93年の「ブルー」と言う作品はかなりブットんでいる。画面がただ青いだけで終わると言うとんでもない映画だ。彼のブルーレイボックスが11月に発売するが、一応買うつもり。そして最後を飾るのがビル・ブライドン監督の「道化師」で作曲はルッジェーロ・レオンカヴァッロ。19世紀南イタリア、モンタルト村を舞台に祝祭の午後から夜までの出来事が描かれているもので、イタリア人作曲家のオリジナルだそうだ。日常の暴力を描いたオペラとも言われている。物語は道化師を演じる旅一座の座長が嫉妬のあまり芝居と現実を混同し、妻と愛人を舞台で殺すと言うものになっている。

良い映画なんだと思うけど、オペラが全然わからない自分にとっては少しきつかった。
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