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アンテベラムのbutasuのネタバレレビュー・内容・結末

アンテベラム(2020年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

人種差別版シャマラン。ワンアイディアのみの映画でそれなりに面白かったが、ちょっとそれに頼り過ぎな気がしないでもない。

前半に「奴隷の黒人女性エデン」、中盤に「同じ女優が演じる現代の活動家の黒人女性ヴェロニカ」を見せることで、エデンの子孫がヴェロニカであるかのように見せる。上手いのは切り替えの見せ方。エデンとヴェロニカの切り替わりのシーンでは、エデンが眠ったシーンでスマホの目覚ましがなる。「えっ?」と思うと現代のヴェロニカのシーンが始まる。そしてエデンのシーンに戻ると、そこでまたスマホの着信音が鳴るのである。「えっ?何でエデンのシーンでスマホ?…あっ!!」という演出。真実に気がついたこの瞬間は思わず声を上げてしまった。「完全にシャマランのやつじゃん!」と。

シャマランと違うのは、騙されていたのが主人公ではなく観客の我々だったという点。「黒人奴隷同士で会話をしてはいけない」という作劇上不自然ではない絶妙なルールは、我々に真実を気取られないためのものだったのだ。終盤にちゃんと上空を飛行機が通るシーンまで入れてきて、「シャマランとは違ってこちらは"あえて見せていなかった"だけだよ」ということを強調してくる。ちょっとずるいしシャマランに対する敬意を感じられないやり方はやや嫌味があるが、まぁでも二番煎じとはいえやっぱりこのアイディアは画期的で面白い。

ただあまりにこのアイディア一本に映画が寄りすぎている。真実が明かされてからはありきたりでつまらないドタバタ脱出劇(このあたりは「ゲット・アウトっぽい」)のみで終わってしまう。かといって前半も中盤も延々と前振りを見せているだけなので、冗長で若干退屈。シャマランほどではないにしても、細かいところを考えるとやっぱり無理がありすぎる設定であり、オチを作りたいがためだけの映画になってしまっているのは残念。どうせ二番煎じなのだから、ワンアイディアだけではなくもっと作り込んでほしかった。
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