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ウィッシュ・ルームのslowのネタバレレビュー・内容・結末

ウィッシュ・ルーム(2019年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

張り巡らされたケーブルは人の血管のようである。この館は人(人体)そのものなのではないか。あの部屋は脳であり、あらゆる物を生み出す。それは想像することや夢を見ることだし、それらは現実を突きつけられた途端(外に出た瞬間)無くなってしまうもの。中でも外の世界では生きられないシェーンは流産し会うことのなかった子であったのかもしれず、そういう意味では館はケイト自身。これはケイトの深い悲しみを追体験するような物語だったのかなと深読みしてしまった。頭の中で成長する姿を見ることができても、それは思い描いていた未来に過ぎないというところが、あまりにも辛く悲しい。夫が贅沢をするのも、ケイトの稼ぎがないと生活ができないことの表れかなと。無理矢理考察すればそう観られなくもない本作。序盤ににおわせる稼ぎのない売れないアーティストである夫への不満と、息絶えた鳥がいつのまにか消える演出(ジョン・ドゥの創造物?)。ふたつの方向性を示唆しておいての怒涛の展開だったけれど、ちょっとジョン・ドウを中心にするには中途半端に思えてしまったので、間(?)をとってケイトの悲しみとした。シェーンが教えたことや見たこと以外は知らない子供(銃の扱い方やセックスなど見よう見まね)だったところの無駄な真面目さは良かったと思うし、割れたスノードームがシェーンの世界へと繋がって行く流れは上手かったなと(でもそうなら家の外観が完璧なのは間違いなのだけど)。自分の読みであのラストを観ると、またあの館での恐怖や苦しみ(過去のトラウマ)がやってくるかもしれない…というケイトの表情にも見えた。ジョン・ドゥは夫の焦りやアーティストとしての限界が生み出した人物に見えなくもなかったけれど、刑務所まで行っているし?そこはちゃんと存在したのでしょうね(知らんぷり)。もう細かいこと考えず単純にこのジェットコースターを楽しめばいい。そういう作品だったような気もする。
あと本当どうでもいい話、ケイトの翻訳の仕事って『9人の翻訳家』にかけてるの?公開年は同じだし、ただの偶然かな。
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