じゅ

ロスト・プリンスのじゅのネタバレレビュー・内容・結末

ロスト・プリンス(2020年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

子の成長のこういう描き方は初めてみた。
忘却の地なあ。俺の忘却の地には誰がいて何があるだろう。


ソフィアやパパが暮らす世界ともう一つ、パパの物語の世界観で形造られた世界。そこにはパパの顔をした王子様とか、ソフィアの顔をしたお姫様とか、悪役やら不思議なキャラクターやら民衆たちがいっぱい住んでいる。ソフィアが寝る前にみんな集まってパパの物語を上演して、その時以外は各々楽屋で休むなりしている。
やがてソフィアが中学校に入る11歳くらいの思春期になると物語は上演されないようになり、再び上演されるようになった頃にはクラスの気になる男の子に王子様の座を奪われている。娘の王子様でいたいパパは新しい王子様のマックスくんを締め出そうとして忘却の地へ突き落とす。ついでにパパ王子も悪役に突き落とされる。
忘却の地で過去に遡ったその果てで、一番最初にこの地に来た王女様であるソフィアの母、パパの妻の顔の人に会う。彼女はこうなることが運命だとパパ王子を引き止めるも、彼は頑として諦めない。ただ、マックスくん王子もまたしぶとく付いてくる。
一方でソフィアは、淡い恋心を抱くマックスに招待されたパーティへ行くためにパパに嘘をつき、初めて大喧嘩をした。さらに、マックスに用意したプレゼントの絵をバカにされて荒んでいた。パパとマックスくん王子が忘却の地を抜け出して物語の世界に戻ると、そこは地が裂けて建物が崩壊し、砂嵐が吹き荒れている。
その頃実在の方のパパは、難しい時期の娘との接し方について隣人に相談していた。彼女の父は彼女の味方のスーパーパパだったが、そんな父の想いをいつしか重たく感じるようになったという。砂嵐の中のパパ王子は、マックスくん王子に姫様を託し、深い眠りにつく。
15年後、ソフィアが出産した孫にパパが語りかける。パパ王子や忘却の地で深い眠りについていたキャラクターたちが再び目覚め、物語を紡ぎ出す。


今いるところが現在で、向いてる方に伸びてる道が未来で、背中の方に伸びてる道が過去である、と。そんで後ろ向きに歩いてけば過去に戻れるってんなら、とりあえず後ろ向きに歩いて劇場に戻って、結局これが娘の精神世界なのかパパの精神世界なのかとかいうくそどうでもいいことを途中気にしてた俺の頬を引っ叩きに行く。
そりゃあ世界そのものの環境変化とか住民の消えるor消えないがソフィアの心とか記憶やら意識に左右されて、王子様の行動がパパの心に左右されてたから1人だけのものじゃなさそうだけど、そういう世界ってことでいいじゃん。精神世界は1人の心の動きで構成されるもんだっていう先入観が古かったと反省している。

子はいつか親離れするし、親もまた子離れしなきゃいけない。遅かれ早かれ子を解放しなきゃいけない。そうする運命だ。
そうなったとき、物語は忘れられていくのかもしれない。でもきっと永遠の終わりじゃない。いつかまた物語を必要とする子が生まれてくる。今度語るのはパパかも知れないし、ソフィアかも知れない。いずれにせよ、そのとき一時的に忘れられて長い眠りに落ちていたキャラクターたちがまた動き出す。
寄り添うべき時に寄り添って、中学校に入った後みたいな「自律が求められる」ような時には離れて、また寄り添うべき時が来るかもっていう物語および親の役割って難しい。子どもが難しい年頃の時、親もまた初めての困難にぶち当たる難しい時期なわけだ。一緒に成長してくんだな。


それにしても、満員のバスで車のドアの開閉音の練習してたら、えっ嘘でしょ吐くの?って思う。
じゅ

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