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The Wave(原題)のSSDDのレビュー・感想・評価

The Wave(原題)(2019年製作の映画)
4.3
■概要
ある企業弁護士の男は保険の契約にまつわる支払いについて大きな要因を見つけ、会社の利益に繋がり評価されると浮き足立っていた。同僚に促され、普段は平日には行かない飲みに出て前祝いをすることとなるが、成り行きで摂取したドラッグにより幻覚と真実が混ざり始める…。

■感想(ネタバレなし)
冴えない男のトリップムービーなのだが、思いの外メッセージ性もあり、伏線も多く、トリップ中のビュジュアルも真新しく感じられ映像美もある。

簡単に言えばタイムリープものなのだが、一癖強い。

パームスプリングとドニー・ダーコを足して二で割ったような作風に痺れた。

パームスプリングではコメディ過ぎる、ドニー・ダーコでは難解すぎる…それらを混ざ合わせて調和の取れた形にしたような、それでいて既視感は少なく楽しめる作品だった。

ジャスティン・ロングの善良でも悪人でもなく凡人でありながら自己中心的で情けない役回りを演じさせると本当一級品。

ちなみにTHE WAVE ウェイヴというドイツ映画もありますが、独裁者は現代でも生まれるかという学生との実験の話で全く異なりますが、オススメです。










■感想(ネタバレあり)
・総評
自身の死の前に全て正しくありたいと願い、変わらない結末の前に最善のことを行うというあくまでも一個人の正義感や満足感の話ではあるのだが、死ぬ直前の数日を見直すことができるなら幸せなことだろう。そして世界は"調和"という報われる世界であるべきというメッセージはシンプルに好きでした。
"ベイビー、今日は大事な日だろ?"が起点となるワードも好みです。

・起きている事象
評価が低い理由は難解に思えるからだろうが、主人公の一言で全て理解できる理屈だったのも痛快。
"時間は思ったよりも相対的なんだな"

相対性理論とは観測者によって時間の経過が異なるということと捉えると、ドラックの役割が他人と時間の観測を異なる領域になってしまうことにより、結果を観測しに行くことができ、"結果を踏まえて事前に行動できるという状態"になっていた。

説明不能な物理的な移動が他人も観測していることも含めて、他者と時間軸が変わってしまうのが能力なのだろう。

・時系列
たぶんこうだろう。
x日:
-パーティに向かう、ドラックを摂取

x+1:
-会議で保険金の支払いが不要と結論
-翌日の売人の監禁に備えて金を作り、ホームレスに委託する
-自身の事故死の保険金を、保険支払いを止めた家族を名義にする

x+2:
-ドラックを盗み、社長のトランクに積む
-売人に捕まり殺されかけるがホームレスが金を届ける
-社長に引かれて死亡する

・ラストシーンの世界
勧善懲悪の話で、世界に"調和"を与えるのは不当な利益や他者に悪影響を及ぼす人間が全て不利益を被る終わり方。

自己中心的で冷淡だった主人公は死を経験する。
だが時間の観測が変わっているので、死に際に発する脳内物質による快楽的な快感を恒久的に得て、天国のような世界でまどろみ続け苦痛から解放されているのだと思う。

脳内世界のためナタリーは自分の描いた理想の女性だし、空は脳内伝達物質のように煌びやかに光っている。
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