[第一部だけ1億点、残りは知りません]　70点

輪廻をテーマに三人の主要人物の魂の変遷を三人の監督が三つの短編にして繋げたのが本作品。言ってしまえばキン・フー以外はカスなんだが、キン・フーの異常さはそれを補って余りあるレベルでイカれている。

第一部：明朝
秘密警察の偉い人、反乱軍の長、州知事の娘の三角関係。普段のキン・フーよりも戦闘に時間を掛けられないため、序盤から見せ場を叩き込む。すっかり悪役になってしまった秘密警察のシー・チュンが矢を金属の棒で弾き、掴んで投げ返す超人的アクションを切り返しだけで描いて時間を圧縮する。そして、彼の補佐官として登場するのが元倭寇の唖者の大男だ。娘を狙う元婚約者として反乱軍の長が職権乱用気味に登場し、自分の軍を使って娘を奪い返そうとする。中盤のアクションは普段のキン・フーにしてはかなり暴力的で、物がどかどかと壊れるのは勿論のこと、死んだ敵の血が付いた剣を振ったらカメラレンズに血が飛んできたり、副官が不気味な笑顔を浮かべながら血塗れの剣を拭ったりとかなり視覚的なインパクトを与えてくる。しかも40分弱にしてはプロットも多層的で、騙す/騙されるという構図を言及だけされる人間も含めて何重にも仕組んでいる。

極めつけは元倭寇の彼がコウメ太夫のように"チクショーーー！！"と叫ぶシーンであり、ここが本作品の一番強烈なシーンとなった。唖者って言ってんのに叫ぶのも衝撃的だが、なにせコウメ太夫だもん。


第二部：清朝後期
京劇の劇団長(みんな大好きシー・チュン)、その劇団の看板娘、劇団の支援を名乗り出る金持ちの三角関係。先程のキン・フーの担当分とは打って変わって、物静かな画面構成と堅実な切り返しを基調としたせいでもっさりしてしまった第二部。第一部が衝撃的すぎて普通の階級差恋愛を堅実に撮っただけの第二部がとばっちりを食う羽目に。悪くはないが、取り立てて言うこともない。


第三部：現代
ある島の住職兄弟(お兄さんがシー・チュン)、島にやってきた現代舞踊劇団のダンサーの三角関係。これが酷いのよ。住職弟が宗教とか神について多少の疑問があるという話をすると、無神論者のダンサーが"神はいないのよ！あんた何信じてんの？寺なんか捨てて私と一緒に暮らそーよ！"と他人の文化に土足で乗り込んできた挙げ句、信心まで否定して恋愛を取らせようとする。なんと下劣な…他人が何を信じているかは勝手だし、それを他人に強要するなど言語道断。極めつけは最終的に"儀式を取るの？私を取るの？"という圧倒的メンヘラ発言を残して結果的に住職兄を死に追いやる。胸糞とか言う前に終わってる。一番死んで欲しい人が死ななかった、人生そんなもんか。祭りのショットはちょっとジャン・ルーシュっぽかった。


ということで、第一部の圧倒的異常さが凄いという話でした。

• #2019ofOdessa
• #Filmex2019ofOdessa

台湾の映画アーカイブ「TFAI國家電影及視聽文化中心」のyoutubeチャンネルで無料公開されてたのを見た。
全三章のオムニバスで、転生を繰り返す男女3人の話。
キン・フーによるpart1がめちゃくちゃ凄かった。見てるだけで幸せになれる画面の躍動感！約40分ずっと美しくカッコいい。
part2、part3は彭雪芬がかわいいこと以外あんまり印象に残らず…

• #顔夕*TW

特に1,2章は文句に面白い。ショット自体は偉大な構図を描きながらもそこに甘んじる姿勢を映画は見せない。流暢な編集で切れ味よく物語を紡いでゆく。この映画の呼吸が急進性を増していきながら得体の知れないラストに至るまで観客は息をつく暇すら与えられない。
岩陰からニョキニョキと飛び出す敵と圧倒的な武との出逢いが、正しく映画的な幸福を画面に輝かせる。